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超幾何関数

超幾何関数

日:超幾何関数
英:Hypergeometric function,仏:Fonction hypergéométrique,独:Hypergeometrische funktion

 二階線形常微分方程式
  • 超幾何微分方程式
は、3個の確定特異点(0,1,∞)を持つ。これを、(Gauss の)超幾何微分方程式といい、この解を超幾何関数という。
 そのうち、原点で有限となる基本解
  • 第1種超幾何関数の定義
を、第1種超幾何関数という。特に、この級数は超幾何級数と呼ばれその収束半径は1であるため、実際には、これに線形接続公式
  • 超幾何関数の接続公式
等による解析接続を施して定義域を拡張したものが、本来の第1種超幾何関数である。「超幾何級数」という名称は、幾何級数(等比級数)を含む形で一般化した級数という意味を持つ (Hyper geometric series の意訳)。記号2F1は、Pochhammer 記号が分子に2個、分母に1個あることを示している。第1種超幾何関数は、aまたはbが負の整数-mのとき、m次の多項式(Jacobi 多項式)となる。
 第1種超幾何関数に対して、ガンマ関数因子に由来する不定性を取り除いた 「正規化された超幾何関数」
  • 正規化された超幾何関数
は、数値計算等で好都合なため多用される。
 一方、原点で無限大となる、2F1とは線形独立な基本解
  • 第2種超幾何関数の定義
を、第2種超幾何関数と呼ぶ。ただし、a,b,cの値によって発散する場合は極限をとる。この極限によって生じる無限級数は対数項を含む。第2種超幾何関数の標準的な定義の形、および関数記号は存在していない (上記は、第2種 Jacobi 関数から類推される独自定義の関数。超幾何関数系の第2種関数の定義方法に対する当サイトでの方針は、別頁「Questions」を参照)。
 一般に超幾何関数は、複素平面上z=0,1,∞に特異点を持つ無限多価関数であって、通常は-∞~0及び1~+∞に分枝切断線を置く。前述の二つの基本解は、これらの特異点のうち原点を近似の中心とした場合である。残り二つの特異点を近似の中心にした場合もそれぞれ考えることができるので、根本的には6種類の基本解(2基本解×3特異点)があり、さらに6種類の基本解それぞれに対する代数関数因子が4種類あるので、合計24種類の基本解を定め得る。これらの解の具体的な関数形は、1836年に E. E. Kummer によって求められた。
 超幾何微分方程式の一般解は、このような基本解の2個の線形結合式となるが、その係数(関数)はa,b,cの指数関数およびガンマ関数で表わせる。なお、これよりも高度なクラス (確定特異点が4個以上など) の線形微分方程式になると、一般解の係数の具体的表示は現在でも知られていないか、または極めて複雑な関数となる。
 a,b,cが1だけ互いに異なる3個の超幾何関数は、種々の線形漸化式によって結ばれる。これを「隣接関係式」という。よく知られた特殊関数の多くで、異なる次数の関数間に漸化式が存在するのは、これらが超幾何関数の特別な場合になっているからである。隣接関係式は、元々の超幾何関数から異なるa,b,cの超幾何関数が次々と得られるため、非常に便利である。例えば、
  • 第1種超幾何関数の特別な場合
のような、特殊値の一群を求めることができる。
 超幾何関数の特別な場合として表わされる関数は非常に多く、Jacobi 関数Gegenbauer 関数Legendre 陪関数完全楕円積分などがある。また、(a,b,cが特定条件での)二つの線形独立な超幾何関数の比を逆関数にすると、保型関数が生じる。
 超幾何微分方程式の確定特異点のうち1を∞と合流させ、1級の不確定特異点にした微分方程式の解は、合流型超幾何関数と呼ばれ、これの特殊形として表わされる関数も非常に多い。
 なお、超幾何関数と直接関係は無いが、超幾何微分方程式の極限として表わされる微分方程式から生じる関数として、Lamé 関数Mathieu 関数回転楕円体波動関数などがある。これらは超幾何関数よりも高いクラスの関数であるが、比較的整った諸性質(隣接関係式など)を持っていない。言いかえれば、超幾何関数はそれら「美しい」性質を持つ関数としては、最も高度なものの例である。
 超幾何関数は、1748年に L. Euler によって得られた積分表示式
  • 第1種超幾何関数の積分表示式
で表わされ、逆にこれをもって超幾何関数の定義とする場合もある。この積分はa,b,cを変数と見た場合、明らかにベータ関数の拡張にもなっている。超幾何関数は、この他にも様々な積分表示式で表わせることが知られている。
 超幾何関数は、単独で物理学等に用いられることは少なく、むしろ応用上重要な種々の特殊関数どうしの関係、特殊関数の一般論的な側面が問題となる場合に用いられることが多い。
 歴史的には、18世紀に Euler が初めて超幾何微分方程式とその解の研究を手掛けた。19世紀初頭になると、J. C. F. Gauss や N. H. Abel 等によって級数の収束性についての厳密な理論が展開され、特に 「Gauss の収束判定法」 は超幾何級数のために開発された。19世紀中葉では複素解析学が整備され、G. F. B. Riemann などの著名な数学者によって、複素領域で定義された線形常微分方程式の解となる関数の大域的理論や多価関数としての構造が深く研究された。ここでも超幾何微分方程式および超幾何関数が理論の具体的な雛形であり、発展の原動力となっている。その後、超幾何関数自体も一般化や多変数化など様々な拡張が考えられ、今なお盛んに研究されている特殊関数の一つになっている。

第1種超幾何関数の記号

 実変数の第1種超幾何関数のグラフ。 順に、①第1種超幾何関数の記号。②第1種超幾何関数の記号。③第1種超幾何関数の記号。④第1種超幾何関数の記号。⑤第1種超幾何関数の記号。⑥第1種超幾何関数の記号,いずれも、a=-6~6 (+0.2)。

 複素変数の第1種超幾何関数第1種超幾何関数の記号のグラフ。
  • 第1種超幾何関数のグラフ(複素変数)
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 複素変数の第1種超幾何関数第1種超幾何関数の記号のグラフ。
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 複素変数の第1種超幾何関数第1種超幾何関数の記号のグラフ。
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 複素変数の第1種超幾何関数第1種超幾何関数の記号のグラフ。
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 複素変数の第1種超幾何関数第1種超幾何関数の記号のグラフ。
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 複素変数の第1種超幾何関数第1種超幾何関数の記号のグラフ。
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第2種超幾何関数の記号

 実変数の第2種超幾何関数のグラフ。 順に、①第2種超幾何関数の記号。②第2種超幾何関数の記号。③第2種超幾何関数の記号。④第2種超幾何関数の記号。⑤第2種超幾何関数の記号。⑥第2種超幾何関数の記号,いずれも、a=-6~6 (+0.2)。

 複素変数の第2種超幾何関数第2種超幾何関数の記号のグラフ。
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Riemann のP関数

日:RiemannのP関数リーマンのP関数
英:Riemann P-function,仏:Fonction P de Riemann,独:Riemannsche P-funktion

 2階の線形常微分方程式
  • Riemannの微分方程式
を、Riemann の微分方程式という。またその基本解(の代表)wは Riemann のP関数と呼ばれ
RiemannのP関数
と表記される。これは、Riemann の微分方程式の確定特異点a1, a2, a3における特性指数が{λ1, λ'1}, {λ2, λ'2}, {λ3, λ'3}であることを明示した形となっている。すなわち、Riemann の微分方程式の2基本解w1(z), w2(z)を、分岐点ak (k=1, 2, 3)の近傍において
  • 確定特異点の近傍におけるRiemannのP関数
のように振る舞う関数に選定することができる。なお、確定特異点が無限遠点になる場合は、
  • 確定特異点が無限遠点になる場合のRiemannのP関数
と解釈する。
 Riemann のP関数は、超幾何関数を用いて
  • 超幾何関数によるRiemannのP関数の定義
と表わされる。逆に、超幾何関数は Riemann のP関数の特別な場合
  • RiemannのP関数の特別な場合である超幾何関数
である。Riemann の微分方程式の形によって、Riemann のP関数は、パラメータの列を入れ替えても、またλk, λ'kを入れ替えても不変であることが分かる。
 Riemann のP関数は、変数に一次分数変換を施した
  • 変数に一次分数変換を施したRiemannのP関数
なる関係を満たす。この他にも、
  • RiemannのP関数が満たす関係式
を満たす。より一般的に、
  • RiemannのP関数が満たす線形関係式(Riemannの定理)
の3個の関数は、zの多項式を係数とする線形関係式で結ばれており、これは Riemann の定理と呼ばれる。
 Riemann のP関数は、超幾何関数の多価性を解明するために、G. F. B. Riemann が導入した※1。3個の確定特異点、およびこれらのいくつかを合流して得られる不確定特異点を持つ線形常微分方程式の解は、すべて Riemann のP関数によって表わすことができる。
 なお、Riemann のP関数ではないが、確定特異点が3個よりも多い場合の解を、Riemann のP関数の記法に倣って記述することがある。例えば4個ならば、
RiemannのP関数の記法に倣った確定特異点が4個の場合の解
となる。この場合は楕円体関数系に関連する。(通常は Heun 関数の一種とされる。ここにηは、アクセサリーパラメーターと呼ばれ、楕円体関数の固有値に相当する。)
 以下の描画における Riemann のP関数は、分枝切断線が3個の特異点a1, a2, a3をこの順に通る一つの円弧となるものを採用している。また、円弧が直線になる場合は描画しない。

【註記】
※1:Pの発音は、Riemann がドイツ人であることからドイツ語読みの「ペー」と発音することがある。
他方、Riemann はPをギリシャ語のρ(ロー)の大文字の意味で用いたという説もある。

RiemannのP関数の記号

 複素変数の Riemann のP関数RiemannのP関数の記号のグラフ。
  • RiemannのP関数のグラフ(複素変数)
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 複素変数の Riemann のP関数RiemannのP関数の記号のグラフ。
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