特殊関数 グラフィックスライブラリー
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その他の特殊関数
Sievert 積分関数
Sievert 積分関数は、のように級数展開される。しかし、Sievert 積分関数は知られている公式が少なく、特に複素変数での計算が難しい。
を複素変数とする Sievert 積分関数は、複素平面上となる点に真性特異点を持つ無限多価関数で、通常はが実軸上で負数となる部分に分枝切断線を置く。
この関数は、M. Abramowitz & I. A. Stegun 著 「Handbook of Mathematical Functions with Formulas, Graphs, and Mathematical Tables」 の p.1000に記述がある。関数名は、放射線物理学者の R. M. Sievert に由来するが、応用的にも、均一な媒質を通る放射線の減衰に関する問題で現れる。例えば、最大放射角度をとするとき、冒頭の積分表示式は、媒質を深さまで通過して到達する放射線の総量を与える。
実変数の Sievert 積分関数のグラフ。。
複素変数の Sievert 積分関数のグラフ。
複素変数の Sievert 積分関数のグラフ。
実変数の Sievert 積分関数のグラフ。=-5~5 (+0.2)。
複素変数の Sievert 積分関数のグラフ。
複素変数の Sievert 積分関数のグラフ。
複素変数の Sievert 積分関数のグラフ。
複素変数の Sievert 積分関数のグラフ。
Abramowitz 積分関数
Abramowitz 積分関数は、も満たす。(を変数とする関数等式とも見なせる。)
が整数の場合の Abramowitz 積分関数は、関数等式と次の冪級数展開
によって定義される。ここに、は Euler の定数である。
が整数でない場合の Abramowitz 積分関数は、一般超幾何関数によって次のように定義される。
複素変数の Abramowitz 積分関数は、複素平面上に特異点を持つ無限多価関数であって、通常はに分枝切断線を置く。
この関数は、1953年に M. Abramowitz が詳細な研究を行い、その結果が Abramowitz & Stegun 著 「Handbook of Mathematical Functions with Formulas, …」 の p.1001に掲載されている。ただし、具体的な関数名は示していない (W. J. Thompson 著 「Atlas for Computing Mathematical Functions (John Wiley & Sons, Inc. 1997)」 では " Abramowitz function " と称している)。
Abramowitz 積分関数は、原子核物理学における熱中性子の吸収、放射電磁波のスペクトルに関する問題等で現れる。
Abramowitz 積分関数は、変数に指数関数を代入した「Abramowitz 積分指数関数」
実変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。①:=0~9 (+0.2),②:=-9~0 (+0.2)。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
実変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。①:,②:,③:。いずれも=0.2~10 (+0.2)。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分関数のグラフ。
実変数の Abramowitz 積分指数関数のグラフ。①:=0~9 (+0.2),②:=-9~0 (+0.2)。
複素変数の Abramowitz 積分指数関数のグラフ。
2番目は、1番目のグラフの垂直軸を常用対数目盛化した場合(以下同様)。
複素変数の Abramowitz 積分指数関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分指数関数のグラフ。
複素変数の Abramowitz 積分指数関数のグラフ。
Glasser 積分関数
ここでの Glasser 積分関数とは、一群の積分のことであるが、本来の Glasser 積分関数は、このうちののみをいう(その他の積分が考察されることもあるが、通常は複素関数として扱われることは希で、標準的な関数記号も存在していない。以下同様)。
また、これらの関数の派生として
さらに Glasser 積分関数に類似の、より簡単な積分
も定義する。は Gauss の超幾何関数の無限級数、または二変数関数である Kampé de Fériet の超幾何関数を用いても表わせる。
明らかに、周期性と擬周期性
を持っている。ここには、0次の Bessel 関数および変形 Bessel 関数である。
以上すべての Glasser 積分関数は超越整関数のため、無限遠点のほかには特異点を持たない。
なお、いくつかの Glasser 積分関数の組として、
の形になっているものを選べる。これは「平面曲線に関する自然方程式」の一例であって、この媒介変数表示で表わされる曲線は、を原点からその曲線上の点までの曲線距離とするとき、における曲率がの導関数となるような曲線になっている(クロソイド曲線は、これの簡単な例である。→ Fresnel 関数)。
実変数の Glasser 積分関数のグラフ。
実変数の Glasser 積分関数による媒介変数表示のグラフ(自然方程式による曲線の例)。
①:、および。
②:、および。
虚変数において、Fresnel 関数のような曲線となるのグラフ。
前の虚変数関数の組からなる媒介変数表示の曲線は、クロソイド曲線に似た形状となる。これも自然方程式による曲線の例である。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
実変数の Glasser 積分関数のグラフ。②は、①よりも更に広い範囲を描画した場合。
次は、前のグラフの値が急増するため、逆双曲線正弦関数で縮めた関数を描画した場合。
前の関数の組からなる媒介変数表示の曲線。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
実変数の Glasser 積分関数のグラフ。
虚変数の Glasser 積分関数のグラフ。
前の虚変数関数の組からなる媒介変数表示の曲線。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
実変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
複素変数の Glasser 積分関数のグラフ。
超指数関数
日:超指数関数,スーパー指数関数英:Super exponential function,仏:Fonction super exponentielle
日:テトレーション,英:Tetration,仏:Tétration,独:Potenzturm
「第1の演算」である「和」を繰り返した演算として「第2の演算」である「積」、積を繰り返した演算として「第3の演算」である「累乗」が生じる。累乗を繰り返して入れ子構造にしたものは、「第4の演算」という意味で「テトレーション」と呼ばれる。例えば
超指数関数は、複素平面上の区間に分枝切断線を有する無限多価関数である。実変数においてはで定義され、正の方向でその値は急激に増大する。
において、超指数関数は一定の値
に近づく。この値は超越方程式の解(複号のうちの+)である。
【註記】
※1:その方法はいくつか知られており、今後の研究によって新しい計算法が追加される可能性もある。当サイトの Mathematica コードでは、単に Newton 法を用いて後述の超対数関数の逆関数を直接求め、さらに、漸近近似式や上記の関数等式を用いて定義域を拡張している。
実変数の超指数関数のグラフ。※1:その方法はいくつか知られており、今後の研究によって新しい計算法が追加される可能性もある。当サイトの Mathematica コードでは、単に Newton 法を用いて後述の超対数関数の逆関数を直接求め、さらに、漸近近似式や上記の関数等式を用いて定義域を拡張している。
複素変数の超指数関数のグラフ。ただしが 3.5 より大きい実数の付近では関数値が急激に増大するため、グラフが正確に描画できていない。
超対数関数
日:超対数関数,スーパー対数関数英:Super logarithm,仏:Super logarithme
超指数関数の逆関数
が分かる。このほか、における値は-2 になる。
超対数関数は通常、複素平面上の2点
を特異点とし、(複号同順)方向に伸びる分枝切断線を有する無限多価関数とされる。しかし特異点はこれがすべてではなく(方向の分枝切断線では隠れて見えない)
超対数関数の計算法はいくつか知られているが、現在も研究が進められており、未だ整理されていない感がある。当サイトがプログラミングで採用した一つの方法は Andrew Robbins によるもので※1、冪級数展開式
を用いる。ここに、係数は、
なる線形代数方程式を解いて得られる。
【註記】
※1 : Andrew Robbins「Solving for the analytic piecewise extension of Tetration and the Super-logarithm」(2005年)。なお、この論文はインターネット上のみで公開されている。論文中にも Mathematica のコードがあり、当サイトのコードは複素変数でも計算できるようにこれを書き換えたものである。
実変数の超対数関数のグラフ。※1 : Andrew Robbins「Solving for the analytic piecewise extension of Tetration and the Super-logarithm」(2005年)。なお、この論文はインターネット上のみで公開されている。論文中にも Mathematica のコードがあり、当サイトのコードは複素変数でも計算できるようにこれを書き換えたものである。
複素変数の超対数関数のグラフ。
複素変数の超対数関数(周期関数型)のグラフ。
Böttcher 関数
日:Böttcher関数,ベトヒャー関数英:Böttcher function,仏:Fonction de Böttcher,独:Böttcher-funktion
を複素数とする反復力学系(漸化式)
の極限において、がとならないようなの集合は、Julia 集合と呼ばれる。この場合の複素数の点列を軌道といい、これが有限個数おきに同じ値を繰り返す場合、「軌道は周期を持つ」 等という。
もし、Julia 集合が単連結集合(孤立した部分を持たない集合)である場合、すなわちが Mandelbrot (閉)集合上の点ならば、その Julia (閉)集合の外部を単位閉円板の外部に等角写像するような関数
が存在する。これを、Julia 集合の Böttcher 関数という。1905年に L. E. Böttcher が得た定理に基づいて、Böttcher 方程式と呼ばれる関数等式を満たす一般の Böttcher 関数(写像)の存在が保証されるが、Julia 集合の Böttcher 関数は、これの特別な例にあたる。
先の等角写像から、Julia 集合の Böttcher 関数はが無限遠点に近づくと、1次関数にほとんど等しくなる。一方、が Julia 集合の境界に外部から近づくと、関数値の絶対値は1に近づく。したがって、Julia 集合の Böttcher 関数の絶対値は常に1より大きくなる。
具体的に、Julia 集合の Böttcher 関数は、
は収束が速いので、Julia 集合の Böttcher 関数の数値計算に使用できる。それでも、が Julia 集合の境界に近い一部の領域では、の級数項
Mandelbrot 集合の Böttcher 関数は、Mandelbrot (閉)集合の外部を単位閉円板の外部に等角写像する関数
Mandelbrot 集合は、集合全体の縮小複製(しかし、それらは微妙に形が歪んでいて相似ではない)を境界の周辺に無数に持っており、あたかも「島」があるような非連結集合に見える。しかし実際は、樹状に延びる細い領域を介して「島」はすべて本体と繋がっており、単連結集合の一部分を成す。1982年に A. Douady と J. H. Hubbard は、を用いて Mandelbrot 集合が単連結集合であることを証明した。
また、Mandelbrot 集合の面積は、Mandelbrot 集合の Böttcher 関数の逆関数を Laurent 級数展開したときの係数を用いた無限級数で表わすことができる(詳しくは、http://mathworld.wolfram.com/MandelbrotSet.html 等を参照。ただし、この級数は収束が非常に遅い)。
の絶対値が大きくなると、の値はに近づく。そこで、逆に任意の偏角を指定したとき、曲線が Mandelbrot 集合の境界までどのように延びているかが問題となる。この曲線はエクスターナル・レイ(External ray:外射線)、または外周角と呼ばれている。
の値が有理数の倍である場合のエクスターナル・レイは、その先端が Mandelbrot 集合の境界まで到達することが証明されているが、その他の場合はごく一部の例を除いて到達するかどうか知られていない(無限に入り組んだ Mandelbrot 集合の隙間に進入し漸近するとも予想されている)。Julia 集合の Böttcher 関数についても、同様にエクスターナル・レイを考えることができる。
Böttcher 関数は等角写像の特殊な例であり、解析的に定義された関数であるものの、複素反復力学系やフラクタル幾何学を起源とし、前述のように専らこれらの分野で応用されることから、通常は特殊関数の一種として扱うことは少ない。
Julia 集合自体は、P. J. L. Fatou, G. M. Julia 等による複素数の反復軌道に関する研究が発端となっているが、これをパラメータの集合と見たときの Mandelbrot 集合の形状を、B. B. Mandelbrot がコンピューター上で発見した1980年まではほとんど注目されてこなかった。それ以降、極めて複雑かつ美しい形状が多くの人々の関心を引き、数学に留まらず哲学・芸術にまで影響を及ぼしている。自然界にありふれているにも係わらず、従来の自然科学が考察対象から除外していた形状や現象のパターンについても、数的・幾何学的に取り扱える現実的な方法をフラクタル幾何学がもたらした。実際、植物の分枝や海岸線の形状などにフラクタル幾何学的な特徴が見られることが指摘されると、直ちにコンピューターグラフィックスによる再現へ応用された。
複素変数の(Julia 集合) Böttcher 関数のグラフ。この Julia 集合は通称で「樹状枝」と呼ばれている。
複素変数の(Julia 集合) Böttcher 関数のグラフ。この Julia 集合は通称で「Douady のウサギ」と呼ばれている。この集合内の複素数は、3個の部分領域が接合した各点の周囲で周期3の軌道をとる。
複素変数の(Julia 集合) Böttcher 関数のグラフ。この Julia 集合の軌道は、周期11を持つ。
複素変数の(Julia 集合) Böttcher 関数のグラフ。この Julia 集合は、その内部に「Siegel ディスク」と呼ばれる不変円周軌道を持つ例として知られる。
複素変数の(Mandelbrot 集合) Böttcher 関数のグラフ。2番目のグラフにおける絶対値と偏角の等高線は、断面が Mandelbrot 集合形の金属棒が帯電しているときの周辺に生じる等電位線と電気力線と見ることができる。また、後者はエクスターナル・レイでもある。
複素変数の(Mandelbrot 集合) Böttcher 関数のグラフ。虚部が最も大きい突起の周辺部分を拡大する。
複素変数の(Mandelbrot 集合) Böttcher 関数のグラフ。負の実軸上にある「島」の周辺部分を拡大する。
これは参考までに、Schwarz の保型関数を単位円の外部に反転し、さらに Böttcher 関数を用いて Mandelbrot 集合の外部が定義域となるようにした関数である。細部の基本領域も判別しやすくするため、最後のグラフのみ等高線を入れていない。