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関数の特異点一覧

特異点は大別すると、分岐を伴う特異点 (分岐点) と、分岐を伴わない特異点とに分けられる。複素球面上の関数が孤立した点sに特異点を持つとき、その関数は特異点sを中心に級数展開すると、大抵次のような関数項が現れる。
(z-s)^α
 αが負の整数 : sは (位数-αの) 極
 αが有理数m/n (mとnは既約) : sは巻数nの代数分岐点
 αが無理数 : sは対数分岐点

log(z-s)sは対数分岐点

Exp((z-s)^α)
 αが負の整数 : sは真性特異点
 αが非整数 : sは超越分岐点
 これらの関数はまた、特異点の近傍での振る舞いを決定する典型的な関数と言うことができる。
 以下では、これらの関数を具体的なグラフで見ることとする。なお、簡単のため、特異点が原点の場合 (s=0) で考える。色は、関数値の偏角に 「グラフの凡例」 で説明しているカラーリングを適用する。

極(Pole)

 z^(-1): 原点は (1位の) 極。

 z^(-2): 原点は (2位の) 極。

 z^(-3): 原点は (3位の) 極。

真性特異点

 e^(1/z): 原点は真性特異点。
 原点を中心に (負数次の項が無限個の) Laurent 級数に展開される。

 sin(1/z): 原点は真性特異点。複素変数のグラフは実部のみ掲載する。
 実軸上での断面は実解析学でよく知られた曲線である。

代数分岐点

 z^(1/2): 原点は巻数2の代数分岐点。
 特異点の周囲での2回転が偏角1回転分に相当する。

 z^(1/3): 原点は巻数3の代数分岐点。

 z^(-1/2): 原点は巻数2の代数分岐点。
 ただし負数次なので、近傍の形状は極のようになる。

対数分岐点

 z^(1/e): 原点は対数分岐点。
 巻数は∞(存在しない) であり、周囲を何回転しても元の関数 (の分枝) には戻らない。導関数は原点が再び対数分岐点になる。

 log(z): 原点は対数分岐点。
 巻数が∞であることから前の例も 「対数分岐点」 と呼ぶが、log(z)の対数分岐点は、導関数では極になることが本質的に異なる。

超越分岐点

  e^(1/sqrt(z)): 原点は超越分岐点。
 特にこの例では、原点を中心に Puiseux 級数に展開される。


【 Petite Galerie 】
  • 特異点のウィンナ・ワルツ
アニメーション(12.00MB)「会議は踊る:特異点のウィンナ・ワルツ」
(背景画像は、Wilhelm Gause作「ホーフブルクの宮中舞踏会」(1900年)。Wikipedia上のパブリックドメイン画像を使用。)

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