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ガンマ関数(階乗関数)

ガンマ関数

日:ガンマ関数Γ関数
英:Gamma function,仏:Fonction gamma,独:Gammafunktion
日:階乗関数
英:Factorial function,仏:Fonction factorielle,独:Fakultätsfunktion

 ガンマ関数は、L. Euler によって1729年に発見された。その動機は、通常は自然数nに対して定義される階乗n!を、自然数ではないnの場合にも拡張しようということにあった。
 Euler は、まず極限表示式、およびこれを式変形して得られる無限乗積
  • ガンマ関数の極限表示式・無限乗積式
によってガンマ関数を定義し、後年、それが次の積分表示式にも一致することを示した。
  • ガンマ関数の積分表示式(第2種Euler積分)
現在、この定積分は「第2種 Euler 積分」と呼ばれ、ガンマ関数の定義と言えばまずこれを挙げる人が多い。(この他に「第1種 Euler 積分」という定積分もあって、これは後述のベータ関数のことを指す。)
 ガンマ関数は、関数等式
ガンマ関数の関数等式
を満たし、Γ(1)=1であることから、nを負でない整数とするとき
  • ガンマ関数:整数引数での階乗との一致
が従うので、階乗の連続化になっている※1。このほかに、相補公式や相反公式などの名称で呼ばれる
ガンマ関数の相補公式
の他、倍数公式などの様々な関係式を満たす。特に、この相補公式から
ガンマ関数の1/2での値
なる非自明な結果が導かれる。
 現在では、A. M. Legendre が初めて用いた記号Legendreによるガンマ関数の表記法が「ガンマ関数」なる名称とともに定着しているが、Euler が実際に用いた記号はEulerによるガンマ関数の表記法であった。(Euler の定義は階乗と一致していたが、Legendre の定義は何故か上記のように1ずれている)。なお、主にドイツの古い文献等では、時折この記号の代わりに階乗関数:Π(z)=z!を採用していることがある。
 複素解析関数としてのガンマ関数は、引数が正でない整数のときに1位の極をもつ有理型関数で、零点を持っていない。よって、ガンマ関数の逆数は超越整関数である。このことから、Weierstrassの標準形と呼ばれる表示
  • ガンマ関数:Weierstrassの標準形
が可能である。ここに現れたEuler定数:γ=0.5772156649…なる定数は「Euler の定数」(または「Euler - Mascheroni 定数」) と呼ばれ、超越数と予想されているものの、現在でも無理数かどうかすら知られていない。また、1887年に O. Hölder は、ガンマ関数がいかなる代数的微分方程式の解にもならないことを証明した。その意味で、ガンマ関数は極めて超越的な関数とも言われる。
 一方、ガンマ関数は(日本の以前の)大学教養課程で最初に現れる基本的な特殊関数であった。用途から見ても、ガンマ関数は直接単独で用いられる事例よりも、むしろ三角関数や指数関数のように間接的に用いられることが多い。例えば、超幾何関数を冪級数展開したときの係数はガンマ関数で表わされる他、ゼータ関数の対称的な関数等式における関与などが挙げられる。しかし、確率・統計学や差分法など、ガンマ関数が単独で多用される応用分野もいくつかある。

【註記】
※1 : 厳密には、さらに第3の条件
ガンマ関数を規定する極限式
を課せば、この関数等式を満たす (階乗の連続化に相応しい) 関数が、ガンマ関数に限定される。実解析学の立場から見た (実変数x∈Rの) ガンマ関数の限定条件としては、
Bohr-Mollerupの定理
がある。これは現在「Bohr - Mollerup の定理」と呼ばれている。

ガンマ関数の記号

 実変数のガンマ関数のグラフ。2番目:ガンマ関数は階乗の連続化に相当する。
  • ガンマ関数のグラフ(実変数)
  • ガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数のガンマ関数のグラフ。
  • ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数のグラフ(複素変数)

ガンマ関数の逆数の記号

 実変数のガンマ関数の逆数のグラフ。
  • ガンマ関数の逆数のグラフ(実変数)

 複素変数のガンマ関数の逆数のグラフ。これは、無限遠点を除く複素平面上で特異点を持たない。つまり超越整関数である。
  • ガンマ関数の逆数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の逆数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の逆数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の逆数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の逆数のグラフ(複素変数)

ガンマ関数の対数の記号

 実変数のガンマ関数の対数のグラフ。階乗は正の実軸上で急激に増加するため、その対数をとることが多い。
  • ガンマ関数の対数のグラフ(実変数)

 複素変数のガンマ関数の対数のグラフ。複素平面上では、対数に由来する多価性を持つ。ここでは、単純にガンマ関数の対数をとるだけではなく、合理的な解析接続が施された関数を採用している。
  • ガンマ関数の対数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の対数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の対数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の対数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の対数のグラフ(複素変数)

ポリガンマ関数

日:ポリガンマ関数多Γ関数
英:Polygamma function,仏:Fonction polygamma,独:Polygammafunktion

 ディガンマ関数は、ガンマ関数を対数微分したものであって、このディガンマ関数を逐次微分したものを習慣上ギリシャ数詞を冠して、トリガンマ関数、テトラガンマ関数、ペンタガンマ関数…のように呼ぶ。これらを総称してポリガンマ関数と呼び、
  • ポリガンマ関数の定義式(微分と級数)
と定義する。この関数は最初、C. F. Gauss によって研究された。
 ガンマ関数が階乗の拡張であったように、ポリガンマ関数は調和級数の拡張になっている。またこの事から、ポリガンマ関数は対数関数や分数関数の差分化に相当するものと捉えられる。
 複素解析関数としてのポリガンマ関数は、定義域が正でない整数のときに極をもつ有理型関数で、その極の位数はディ、トリ、テトラとなるに従い、1位、2位、3位…となる。またこのほか零点も持っている。ガンマ関数同様、いかなる代数的微分方程式の解にもならない。
 ポリガンマ関数は、応用上ガンマ関数と似た目的で用いられるほか、特に各種の分数の無限和を評価する際に用いられる。またポリガンマ関数は、さしずめガンマ関数の微積分といったところである。なお次のように、ディガンマ関数は Riemann ゼータ関数ゼータ関数の記号の母関数である。
  • ディガンマ関数の冪級数展開式
 なお、ディガンマ関数はディガンマ関数の記号を用いるほか、名称どおりに古代ギリシャ文字のディガンマギリシャ文字:ディガンマを用いて、他のディガンマ関数の記号と表記されることも希にある。(例えば、G. Arfken著「基礎物理数学2 関数論」など。)

ディガンマ関数の記号

 実変数のディガンマ関数のグラフ。 2番目:ディガンマ関数は調和級数の連続化に相当する。
  • ディガンマ関数のグラフ(実変数)
  • ディガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数のディガンマ関数のグラフ。
  • ディガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ディガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ディガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ディガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ディガンマ関数のグラフ(複素変数)

 積木を最大の迫り出し幅で重ねる方法。調和級数は無限大に発散するので、迫り出し幅は理論上いくらでも大きくできる。
  • 調和級数による積木の最大迫り出し幅
  • 調和級数による積木の最大迫り出し幅(想像図)
  • 調和級数による積木の最大迫り出し幅(想像図2)

トリガンマ関数の記号

 実変数のトリガンマ関数のグラフ。
  • トリガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数のトリガンマ関数のグラフ。
  • トリガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • トリガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • トリガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • トリガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • トリガンマ関数のグラフ(複素変数)

テトラガンマ関数の記号

 実変数のテトラガンマ関数のグラフ。
  • テトラガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数のテトラガンマ関数のグラフ。
  • テトラガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • テトラガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • テトラガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • テトラガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • テトラガンマ関数のグラフ(複素変数)

ペンタガンマ関数の記号

 実変数のペンタガンマ関数のグラフ。
  • ペンタガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数のペンタガンマ関数のグラフ。
  • ペンタガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ペンタガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ペンタガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ペンタガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • ペンタガンマ関数のグラフ(複素変数)

ポリガンマ関数の記号

 いくつかのポリガンマ関数を重ねた実変数のグラフ。
  • ポリガンマ関数のグラフ(実変数)
  • ポリガンマ関数のグラフ(実変数)

ガンマ関数の導関数

 ガンマ関数の導関数は、ポリガンマ関数を用いて次のように表わされる。
  • ガンマ関数の導関数の定義式
 また、ガンマ関数の導関数は、積分表示式
  • ガンマ関数の導関数の積分表示式
によっても表わすことができる。
 複素解析関数としてのガンマ関数のm位導関数は、定義域が正でない整数のときにm+1位の極をもつ有理型関数である。

ガンマ関数の導関数の記号

 実変数のガンマ関数の導関数のグラフ。
  • ガンマ関数の導関数のグラフ(実変数)

 複素変数のガンマ関数の導関数のグラフ。
  • ガンマ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の導関数のグラフ(複素変数)

ガンマ関数の2位導関数の記号

 実変数のガンマ関数の2位導関数のグラフ。
  • ガンマ関数の2位導関数のグラフ(実変数)

 複素変数のガンマ関数の2位導関数のグラフ。
  • ガンマ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)

ガンマ関数の3位導関数の記号

 実変数のガンマ関数の3位導関数のグラフ。
  • ガンマ関数の3位導関数のグラフ(実変数)

 複素変数のガンマ関数の3位導関数のグラフ。
  • ガンマ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • ガンマ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)

ガンマ関数のn位導関数の記号

 いくつかの位数のガンマ関数の導関数を重ねた実変数のグラフ。
  • ガンマ関数のn位導関数のグラフ(実変数)

ベータ関数

日:ベータ関数
英:Beta function,仏:Fonction bêta,独:Betafunktion

 ベータ関数は二変数関数であって、二つのガンマ関数の積を一つの積分として表わそうとすると自然に出てくる。この定積分は、しばしば「第1種 Euler積分」と呼ばれるもので
  • ベータ関数の積分表示式(第1種Euler積分)
と表わされる。ベータ関数は Euler による研究を経て、Legendre がその名称とともに定義した。
 ベータ関数はガンマ関数との間に次の関係がある。
ベータ関数とガンマ関数の関係式
よって、ベータ関数の基本的な性質の多くはガンマ関数から導くことができる。また、二項係数の連続化は、ベータ関数の逆数によって表わすことができる。(次のグラフを参照。)
  • ベータ関数による二項係数の連続化
 ベータ関数はその積分表示式の形から、初等代数関数の積分値を評価する際によく現れる。それらの積分は、例えば種々の図形の面積や体積を計算するときに頻繁に遭遇する。なお同じ理由により、和算の「円理」と呼ばれる分野でもベータ関数に相当する値の数表が作成されていた※1。(ただし、和算には関数という概念は無い。)
 また、物理学者 G. Veneziano は、核子内部の「強い力」の性質がベータ関数で表現できることを発見したが、その式は同時に弦(String)の構造を記述していることにも気付いた。ここに弦理論が創始され、後年これは超弦理論へと発展することとなる。

【註記】
※1 : 和算家の和田寧による計算結果を弟子が纏めた書籍「円理算経」に記述がある。具体的には、
  • 和算の健数と竜数
  の数表がそれになる。

ベータ関数の記号

 実2変数のベータ関数のグラフ。
  • ベータ関数のグラフ(実2変数)
  • ベータ関数のグラフ(実2変数)
  • ベータ関数のグラフ(実2変数)

 実2変数のベータ関数のグラフ。(値域の座標を逆双曲線正弦関数で圧縮した場合。)
  • ベータ関数のグラフ(実2変数・スケール圧縮)
  • ベータ関数のグラフ(実2変数・スケール圧縮)

二重階乗関数

日:二重階乗関数
英:Double factorial function,仏:Fonction double factorielle,独:Doppel fakultätsfunktion

 自然数nが偶数のときに2から始まる偶数の積、奇数のときに1から始まる奇数の積、
  • 二重階乗関数:引数が自然数のときの値
を二重階乗関数という。複素変数のときは、ガンマ関数を用いて
  • 二重階乗関数の定義式
と表わされる。
 複素解析関数としての二重階乗関数は、負の偶数点において1位の極を持つが、全体的なグラフ形状は、ガンマ関数とかなり異なる。
 純粋数学、物理学等での二重階乗関数の応用は、専ら変数が自然数のときである。冪級数の係数によく現れる。

二重階乗関数の記号

 実変数の二重階乗関数のグラフ。 2番目:二重階乗関数は二重階乗の連続化に相当する。
  • 二重階乗関数のグラフ(実変数)
  • 二重階乗関数のグラフ(実変数)

 複素変数の二重階乗関数のグラフ。定義に含まれる指数関数と余弦関数との合成関数からの影響が、ガンマ関数との違いを生む。
  • 二重階乗関数のグラフ(複素変数)
  • 二重階乗関数のグラフ(複素変数)
  • 二重階乗関数のグラフ(複素変数)
  • 二重階乗関数のグラフ(複素変数)
  • 二重階乗関数のグラフ(複素変数)

Barnes のG関数

日:BarnesのG関数バーンズのG関数
英:Barnes G-function,仏:Fonction G de Barnes,独:Barnessche G-funktion

 Barnes のG関数はガンマ関数を拡張したもので、E. W. Barnes によって定義された。なお、この関数は多重ガンマ関数と呼ばれることもあるが、当サイトではこの名称を、後述するさらに広い意味の関数に対して用いることとする。
 Barnes のG関数は、関数等式
BarnesのG関数の関数等式
を満たし、zが自然数nのときは、
  • BarnesのG関数:引数が自然数のときの値
となる。このため、正の実軸上において Barnes のG関数の値はガンマ関数よりも急激に増大する。
 複素関数としての Barnes のG関数は、超越整関数で
  • BarnesのG関数の定義式(無限乗積)
と表わされ、正でない整数点z=-nにおいてn+1位の零点を持つ。
 物理学等での Barnes のG関数の応用は、ガンマ関数に比べると少ない。一方、純粋数学では Barnes のG関数のみならず、さらにこれを一般化した関数が数多く定義され、ガンマ関数系の拡張理論が展開されている。後述の多重ガンマ関数はその代表的な例である。

BarnesのG関数の記号

 実変数の Barnes のG関数のグラフ。
  • BarnesのG関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Barnes のG関数のグラフ。これは、無限遠点を除く複素平面上で特異点を持たない。つまり超越整関数である。
  • BarnesのG関数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数のグラフ(複素変数)

BarnesのG関数の対数の記号

 実変数の Barnes のG関数の対数のグラフ。ガンマ関数と同様の理由により、対数をとると好都合な場合がある。
  • BarnesのG関数の対数のグラフ(実変数)

 複素変数の Barnes のG関数の対数のグラフ。ガンマ関数と同様の分枝切断線を採用する。
  • BarnesのG関数の対数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数の対数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数の対数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数の対数のグラフ(複素変数)
  • BarnesのG関数の対数のグラフ(複素変数)

多重ガンマ関数

日:多重ガンマ関数
英:Multiple gamma function,仏: Multiple fonction gamma,独:Vielfach-Gammafunktion

 多重ガンマ関数の研究は19世紀後半から現れ始め、H. Kinkelin (1860年), O. Hölder (1886年)等が先駆者として知られている※1。Barnes も独立に、前述のG関数の導入とその拡張を研究 (1900~1904年) したが、現在では Barnes によって得られた結果が一般に定着している。
 Barnes は始めに、現在 「Barnes の多重ゼータ関数 (多重 Hurwitz ゼータ関数)」 と呼ばれている関数
  • Barnesの多重ゼータ関数
を導入し、これを用いて 「Barnes の多重ガンマ関数」 を
  • Barnesの多重ガンマ関数
と定義した (単純に、前掲の多重ゼータ関数の Dirichlet 級数を代入するだけでは収束しない無限乗積になる。この定義式の意味は、例えば前掲の積分表示式や、Euler - Maclaurin 和公式を適用した多重ゼータ関数を代入する等の方法によって、解析接続が成されていると解釈する) 。
 Barnes の多重ガンマ関数は、複素平面全体において一価有理型関数で種々の公式を満たす。例えば、
  • Barnesの多重ガンマ関数の満たす擬周期性
が成り立つ。また後述のように、Barnes の多重ガンマ関数に対する相補公式から 「Barnes の多重三角関数」 が定義される。
 Ωは 「周期」 と呼ばれ、実際にΩ={1,τ} (Im(τ)>0)となる場合はモジュラー形式と関連があることを新谷卓郎が明らかにしている。また、Ω={1,…,1}である場合の Barnes の多重ガンマ関数Γn (z) = Γn (z, {1,…,1})は、後述のように具体的な表示式が知られており、倍数公式などの特殊な関係式を満たすため応用上重要とされる。よって、グラフもこれらの特殊な場合を描画する。
 Barnes の多重ガンマ関数Γn (z)は、次の無限乗積表示を持つ※2。
  • Barnesの多重ガンマ関数の無限乗積表示式
 また、整数n≦2のときは、初等有理関数、ガンマ関数、および Barnes のG関数によって次のように表わされる。
  • n≦2のときのBarnesの多重ガンマ関数
 多重ガンマ関数は、上記の Barnes による定義の他にもいくつかの異なる定義がある。Vignéras の多重ガンマ関数G n (z)は次の条件を満たす複素解析関数として定義される。
  • Vignerasの多重ガンマ関数が満たす条件
つまり、Vignéras の多重ガンマ関数はn=1のときにガンマ関数、n=2のときに Barnes のG関数と完全に一致する。nが負の整数のときは初等有理関数になる。(この条件式は、ガンマ関数を一意に定める 「Bohr - Mollerup の定理」 の自然な拡張になっている。)
 Vignéras の多重ガンマ関数は、Barnes の多重ガンマ関数Γn (z)と次の関係にある※2。
  • Vignerasの多重ガンマ関数とBarnesのそれとの関係
 また、黒川信重は1991年に、後述の多重三角関数S n (z)を導入する目的で、より簡単な定義の多重ガンマ関数
  • 黒川の多重ガンマ関数
を定義した (同氏はこれを 「素朴な定義」 と称している。以下ではこの関数を 「黒川の多重ガンマ関数」 と呼ぶが、残念ながら現在ではほとんど扱われることがない。よって、ここでもグラフの描画は省略する) 。
 多重ガンマ関数は、各種のゼータ関数やその導関数の特殊値および Stirling 数の表示、モジュラー形式との関連等で近年注目されており、多重ゼータ関数・多重三角関数とともに、数論や組合わせ論での重要度が増しつつある。また、これらの関数は既に多変数化や q-類似などにも拡張されていて、全貌が掴めないほど種類が多くなっているため、21世紀初頭における特殊関数の新しい鉱脈のような趣を呈している。

【註記】
※1 : 特に Kinkelin は、多重ガンマ関数の主要な性質のほとんどを導き出していたが、現在では何故かこの業績が忘れ去られている。この点は、黒川信重 著 「現代三角関数論 (岩波書店 2013年)」 で指摘されている。なお、同著は多重ガンマ関数・多重三角関数の詳細な情報源として欠かせない書籍である。

※2 : この公式は、小野寺 一浩の論文「Weierstrass product representations of multiple gamma and sine functions, Kodai Mathematical Journal 32 (2009) p.77-90」に基づいています。より詳しい情報はこれを参照願います。

Barnesの多重ガンマ関数の記号

 実変数の Barnes の多重ガンマ関数Barnesの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Barnes の多重ガンマ関数Barnesの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

 実変数の Barnes の多重ガンマ関数Barnesの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Barnes の多重ガンマ関数Barnesの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

 実変数の Barnes の多重ガンマ関数Barnesの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Barnes の多重ガンマ関数Barnesの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

Vignérasの多重ガンマ関数の記号

 Vignéras の多重ガンマ関数Vignérasの多重ガンマ関数の記号は、Barnes のG関数と一致するので省略する。
 実変数の Vignéras の多重ガンマ関数Vignérasの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Vignéras の多重ガンマ関数Vignérasの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

 実変数の Vignéras の多重ガンマ関数Vignérasの多重ガンマ関数の記号のグラフ。定義域が負数のときは絶対値が小さいので、2番目のグラフは代わりに1000^(-x) G4(x)を描画している。
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Vignéras の多重ガンマ関数Vignérasの多重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Vignérasの多重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

Barnesの二重ガンマ関数の記号

 複素変数の Barnes の二重ガンマ関数Barnesの二重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

 複素変数の Barnes の二重ガンマ関数Barnesの二重ガンマ関数の記号のグラフ。
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)
  • Barnesの二重ガンマ関数のグラフ(複素変数)

多重三角関数

日:多重三角関数(多重正弦関数)
英:Multiple sine function,仏: Multiple fonction sinus,独:Vielfach-Sinusfunktion

 ガンマ関数の相補公式から三角関数が生じるように、各種の多重ガンマ関数に対しても類似の手順を踏むと、三角関数の拡張版が得られる。現在これらは多重三角関数と呼ばれており、いくつかの定義が知られている。1991年に黒川信重は、前述の 「黒川の多重ガンマ関数」 に対してこれを考えて、「黒川の多重三角関数」
  • 黒川の多重三角関数
を導入した。これは、Hölder によって1886年に導入されていた 「Hölder の二重三角関数」
  • Hölderの二重三角関数
を特別な場合として含み、積分表示式
  • 黒川の多重三角関数の積分表示式
でも定義される。またIm(z)≧0に限り、黒川の多重三角関数はポリ対数関数を用いて
  • 黒川の多重三角関数のポリ対数関数表示
と表わすこともできる。
 黒川の多重三角関数は、対称性や擬周期性
  • 黒川の多重三角関数の対称性・擬周期性
を満たし、z=1/2のときに Riemann ゼータ関数の奇数での値を用いて、
  • 黒川の多重三角関数の特殊値
と表わされる。
 複素関数としての黒川の多重三角関数は、nが2以上の偶数のときにz=m (m∈Z, m>0)m^(n-1)位の零点、およびz=-m (m∈Z, m>0)m^(n-1)位の極とする有理型関数となり、nが3以上の奇数のときにz=±m (m∈Z, m≠0)m^(n-1)位の零点とする超越整関数となる。
 さらに一般的な場合として、Barnes の多重ガンマ関数に対しても 「Barnes の多重三角関数」
  • Barnesの多重三角関数
が定義される。この関数は Barnes 以来、多くの数学者が同等の定義を行うが、特に新谷卓郎によるモジュラー形式との関係の研究、黒川信重による Selberg ゼータ関数のガンマ関数因子に関する研究など、数論への応用を経て次第に注目されるようになり、現在では多重三角関数と言えば大抵この関数を指すようになっている。
 このうち、周期がΩ={1,…,1}である場合の Barnes の多重三角関数S n (z) = S n (z, {1,…,1})が最も重要で、簡明な関係式や性質を多く持つ。例えばS n (z)は、冪乗したS n (z)の有限個の積に多項式の指数関数をかけた形で表わせる。また、S 2 (z, {1,τ})も比較的扱いやすく、前述のモジュラー形式との関連もあって詳しく研究されている。

黒川の多重三角関数の記号

 実変数の黒川の多重三角関数黒川の多重三角関数の記号のグラフ。
  • 黒川の多重三角関数のグラフ(実変数)

 複素変数の黒川の多重三角関数黒川の多重三角関数の記号のグラフ。2番目は対数目盛の場合 (以下同様) 。
  • 黒川の多重三角関数のグラフ(複素変数)
  • 黒川の多重三角関数のグラフ(複素変数)
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 実変数の黒川の多重三角関数黒川の多重三角関数の記号のグラフ。
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Barnesの多重三角関数の記号

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Barnesの二重三角関数の記号

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