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不完全ガンマ関数
不完全ガンマ関数
日:不完全ガンマ関数,不完全Γ関数英:Incomplete gamma function,仏:Fonction gamma incompléte,独:Unvollständige Gammafunktion
不完全ガンマ関数は、ガンマ関数の積分表示式 (第2種 Euler 積分) の積分区間を変数化した、二つの関数
である。区別して呼ぶ場合は 「不完全ガンマ関数」 の名称に、は 第1種- (Lower-) を、は 第2種- (Upper-) を冠することが多い。両者は、
を満たす。
特別なの値のとき、不完全ガンマ関数は
のように初等関数、積分指数関数、および誤差関数に還元されるので、先の関数等式を適用すれば、隣接するの値に対しても次々と還元表示式が得られる。例えば、が正の整数ならば、およびはともに初等関数になることが分かる。
不完全ガンマ関数は、合流型超幾何関数の特別な場合として
と表わすことができ、大半の性質はこれから導かれる。例えば、は二階線形常微分方程式
に展開できる。なお、後者の連分数展開式等に値を代入して得られる定数
は、「Gompertz の定数」 と呼ばれている※1。
を複素変数とする不完全ガンマ関数, は、を特異点 (うち、前者は対数分岐点) とする無限多価関数であり、通常は実軸上の区間に分枝切断線を置く。を複素変数とする場合、一般にはを極とする有理型関数、は超越整関数となる。
不完全ガンマ関数は、ガンマ関数と同様に種々の積分計算に伴って現れる。例えば、Dirichlet 級数の積分表示式を求める場合や Euler - Maclaurin 和の公式を適用した計算などで現れる。
諸科学への応用例もいくつかあり、特に、統計学での各種確率分布の累積関数が著しい。その他にも、量子化学の Gauss 軌道および Slater 軌道、タンパク質の緩和時間における対数的振動、生態系および集団生物学への応用等がある。
不完全ガンマ関数は、A. M. Legendre がガンマ関数の研究に関連して1818年に定義したが、「不完全ガンマ関数」 なる名称は、1871年に O. X. Schlömilch が初めて使用して以降、一般に定着した。
【註記】
※1:1756年に L. Euler は、今日で言うところのの漸近級数に値を強引に代入し、これと Gompertz の定数の連分数表示を比較することで、
なる発散級数の意味付けが可能であるとした。(勿論、正しい推察ではない。Borel 総和法の意味では正しい。)
,を実2変数とする不完全ガンマ関数のグラフ。※1:1756年に L. Euler は、今日で言うところのの漸近級数に値を強引に代入し、これと Gompertz の定数の連分数表示を比較することで、
なる発散級数の意味付けが可能であるとした。(勿論、正しい推察ではない。Borel 総和法の意味では正しい。)
を実変数とする不完全ガンマ関数のグラフ。=-5~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
を実変数とする不完全ガンマ関数のグラフ。=0~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
,を実2変数とする不完全ガンマ関数のグラフ。
を実変数とする不完全ガンマ関数のグラフ。=-5~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
を実変数とする不完全ガンマ関数のグラフ。=0~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の不完全ガンマ関数のグラフ。
正則化不完全ガンマ関数
正則化不完全ガンマ関数とは、と定義することによって、に由来する不定値が発生しないようにした不完全ガンマ関数である。
この定義から、両者は
なお、これを更に正則化した関数、
も定義されている。は、で収束するため大変都合が良い無限級数
応用では不完全ガンマ関数と同等に扱われるが、特に、統計学ではおよびがガンマ分布の累積関数として現れる。また、待ち行列理論の Erlang 損失系ではの逆数が使用される。
,を実2変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
を実変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフは、のそれと定数倍の違いしかないので、実変数のグラフのみを描画する。=-5~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
を実変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。=0~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
正則化不完全ガンマ 関数は、と定数1の差しかなく、を変数とするならばと定数倍の違いしかない。よって、,を実2変数とするグラフ、またはを実変数とするグラフは描画しない。
一方、が複素変数ならば (実部・虚部プロット以外の) グラフの様子は若干異なるので、各々この場合のみ描画する。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
,を実2変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
を実変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。=-5~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
を実変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。=-5~5 (+0.1) の場合。太線はが整数のとき。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ガンマ関数のグラフ。
,を実2変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。実部と虚部に分ける。
,を実2変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。絶対値と偏角に分ける。
,を実2変数とする正則化不完全ガンマ関数のグラフ。実部と虚部に分ける。
正則化不完全ガンマ関数を用いて、独自に定義した関数
は、が非負整数のときに、
,を実2変数とする正則化不完全ガンマ関数 ①:, ②:, ③: のグラフ。
アニメーション:(24.5MB), (23.4MB)
不完全ベータ関数
日:不完全ベータ関数英:Incomplete beta function,仏:Fonction bêta incompléte,独:Unvollständige Betafunktion
現在では、ベータ関数の積分表示式 (第1種 Euler 積分) に対しても積分区間を変数化した、不完全ベータ関数
が定義されている。以下に見るとおり、不完全ベータ関数が満たす公式の多くは、不完全ガンマ関数のそれに類似している。
例えば、変数の交換に関する公式
は、二つの不完全ガンマ関数間の関係式に相当している。また、不完全ベータ関数は関数等式
を満たす。
特別なの値のとき、不完全ベータ関数は
のように初等関数に還元される。先の関数等式を適用すれば、隣接するの値に対しても次々と還元表示式が得られる。
不完全ベータ関数は、超幾何関数の特別な場合として
と表わすことができ、大半の性質はこれから導かれる。
また、不完全ベータ関数は連分数
に展開できる。
不完全ベータ関数は、を複素変数とする場合、を特異点 (うち、前2者を一般に対数分岐点) とする無限多価関数であり、通常は実軸上の区間およびに分枝切断線を置く。を複素変数とする場合は有理型関数となり、を複素変数とする場合は超越整関数となる。
不完全ベータ関数 (後述の正則化も含めて) の著しい応用事例は、統計学におけるベータ分布の累積関数であるが、他にも、軟質または粒状物体のパッキング分析、物質を含み宇宙定数を持つ膨張宇宙の成長因子に関する数式などがある。
不完全ベータ関数の起源は、I. Newton (1676年)、J. Stirling (1730年)、並びに P. S. Laplace (1778年) 等による定積分の公式を求める研究にあり、その後、次第に不完全ガンマ関数と対をなす現在の形に整備された。
を実2変数とする不完全ベータ関数のグラフ。以外では複素数値になるので、実部と虚部に分けて描画する。
を実2変数とする不完全ベータ関数のグラフ。以外では複素数値になるので、実部と虚部に分けて描画する。
を実2変数とする不完全ベータ関数のグラフ。全領域で複素数値になるので、実部と虚部に分けて描画する。
アニメーション(10.0MB)
を実2変数とする不完全ベータ関数のグラフ。=0.02~1 (+0.02)。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の不完全ベータ関数のグラフ。
二つの不完全ベータ関数の差によって、積分区間をさらに一般化した不完全ベータ関数
が定義できる。ここでは、特別な一例のみを描画する。
実変数の一般化不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の一般化不完全ベータ関数のグラフ。
正則化不完全ベータ関数
正則化不完全ガンマ関数と同様に、正則化不完全ベータ関数も正則化不完全ベータ関数の性質は、不完全ベータ関数のそれに上記の定義式を適用すれば直ちに導かれる。例えば、であるから、
正則化不完全ベータ関数は、統計力学におけるモンテカルロ法のサンプリング式に現れる他、不完全ベータ関数と同じ応用事例で現れることが多い。
を実2変数とする正則化不完全ベータ関数のグラフ。以外では複素数値になるので、実部と虚部に分けて描画する。
を実2変数とする正則化不完全ベータ関数のグラフ。以外では複素数値になるので、実部と虚部に分けて描画する。
を実2変数とする正則化不完全ベータ関数のグラフ。全領域で複素数値になるので、実部と虚部に分けて描画する。
を変数とする正則化不完全ベータ関数は、のそれと定数倍の違いしかないので描画しない。
複素変数の正則化不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ベータ関数のグラフ。
複素変数の正則化不完全ベータ関数のグラフ。