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ゼータ関数に関連する関数

Riemann ゼータ関数の導関数

 Riemann ゼータ関数の導関数は、Dirichlet 級数展開式をk階項別微分した
  • Riemannゼータ関数の導関数のDirichlet級数
によって表わされる(和はn=2から始めても同じになる)。 収束しない範囲では、これに「Euler - Maclaurin 総和公式」を適用して得られる式
  • Riemannゼータ関数の導関数のEuler-Maclaurin和
を使用すれば計算できる。ここに積分指数関数の記号積分指数関数Bernoulli数の記号Bernoulli 数であり、整数mを適当な大きさに設定することで、精度を上げることができる。 因みにこれらの式は、kが任意の複素数となる場合にも拡張されるが、ここでは取り扱わない。
 Riemann ゼータ関数の導関数は、
  • Riemann ゼータ関数の導関数の特殊値
等の特殊値がよく知られている。ここに、Eulerの定数は Euler の定数、Stieltjes定数Stieltjes 定数である。
 また、Riemann ゼータ関数の対数微分は、Dirichlet 級数
  • Riemannゼータ関数の対数微分のDirichlet級数
に展開される。ここに、Von Mangoldtのラムダ関数の記号Von Mangoldt のラムダ関数である。
 複素関数としての Riemann ゼータ関数の導関数Riemannゼータの導関数の記号は、s=1にあるk+1位の極を唯一の特異点とする有理型関数で、負の実軸上および臨界線の周辺に零点を持つ。 しかし、いずれの零点の位置も Riemann ゼータ関数に見られるような規則性はない※1。ただし、Riemann 予想が正しいと仮定したならば、Riemannゼータの導関数の記号(k=自然数) は0<Re(s)<1/2に零点を有限個しか持たない (特にk=1ならば、0<Re(s)<1/2に零点を持たない※2) ことが言える※3。

【註記】
※1 : このような相違点を踏まえて、Riemann ゼータ関数とは異なる頁に掲載することとした。

※2 : A. Speiser 「Geometrisches zur Riemannschen Zetafunktion」 Mathematische Annalen, 110, (1935), No.1, p.514-521

※3 : N. Levinson, H. L. Montgomery 「Zeros of the derivatives of the Riemann zeta-function」 Acta Mathematica, 133, (1974), p.49-65

Riemannゼータ関数の導関数の記号

 ①実変数の Riemann ゼータ関数の導関数のグラフ。
 ②負の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を拡大したグラフ。

 複素変数の Riemann ゼータ関数の導関数のグラフ。
  • Riemannゼータ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の導関数のグラフ(複素変数)

Riemannゼータ関数の2位導関数の記号

 ①実変数の Riemann ゼータ関数の2位導関数のグラフ。
 ②負の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を拡大したグラフ。

 複素変数の Riemann ゼータ関数の2位導関数のグラフ。
  • Riemannゼータ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の2位導関数のグラフ(複素変数)

Riemannゼータ関数の3位導関数の記号

 ①実変数の Riemann ゼータ関数の3位導関数のグラフ。
 ②負の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を拡大したグラフ。

 複素変数の Riemann ゼータ関数の3位導関数のグラフ。
  • Riemannゼータ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の3位導関数のグラフ(複素変数)

Riemannゼータ関数のk位導関数の記号

 ①いくつかの位数の Riemann ゼータ関数の導関数を重ねた実変数のグラフ。
 ②負の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を拡大したグラフ。

Riemannゼータ関数の対数微分の記号

 実変数の Riemann ゼータ関数の対数微分のグラフ。
  • Riemannゼータ関数の対数微分のグラフ(実変数)

 複素変数の Riemann ゼータ関数の対数微分のグラフ。
  • Riemannゼータ関数の対数微分のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の対数微分のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の対数微分のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の対数微分のグラフ(複素変数)
  • Riemannゼータ関数の対数微分のグラフ(複素変数)

Stieltjes 関数

日:Stieltjes関数スティルチェス関数
英:Stieltjes function,仏:Fonction de Stieltjes,独:Stieltjes funktion

 Riemann のゼータ関数の極s=1における Laurent 級数展開式
  • Stieltjes定数の定義式
に現れる係数Stieltjes定数の記号を、Stieltjes 定数という。この定数は通常、無限級数及び極限表示式
  • Stieltjes定数の級数と極限式
によって定義され、特にn=0のときγ0=γ(Euler の定数)になる。(ただし、これはk=1の項に含まれる不定値0^0を1と規約した場合。)
 この定義式はともに、変数nが負でない整数のみならず、複素数sに対しても成立する。このような観点から「Stieltjes 関数」Stieltjes関数の記号が定義される※1。
 上記の無限級数の収束は大変遅いので、実際の数値計算では、これに「Euler - Maclaurin 総和公式」を適用して得られる式
  • Stieltjes関数のEuler-Maclaurin和
を使用する。ここに積分指数関数の記号積分指数関数Bernoulli数の記号Bernoulli 数であり、整数mを適当な大きさに設定することで、精度を上げることができる。ただし Stieltjes 関数においては、γ(0)=γ-1である。(これはk=1の項に含まれる不定値0^0を0と規約しているからである。)
 さらに、Stieltjes 関数はs<-1のとき
Stieltjes関数のDirichlet級数
となる。これに対しても同様に Euler - Maclaurin 総和公式を適用すると
  • Stieltjes関数のEuler-Maclaurin和(簡易型)
が得られる。この式はさらに収束が速く、数値計算に便利である。
 後述の Sitaramachandrarao 関数は、Stieltjes 関数によって表わすことができる。すなわち、両者は
  • Stieltjes関数とSitaramachandrarao関数との関係
の関係にある。
 複素関数としての Stieltjes 関数は、s=-1にある (留数が-1の)1位の極を唯一の特異点とする有理型関数で、正の実軸上に零点を持つほか、虚数軸の周辺にも零点を持つ。後者の複素零点の位置は、Riemann ゼータ関数のそれを思わせるような不規則間隔になっているものの、明らかに一直線上にはない。

【註記】
※1 : J. Bohman & C. E. Fröberg 「The Stieltjes function - Definition and properties」Mathematics of Computation, vol.51 (1988) pp.281-289

Stieltjes関数の記号

 ①実変数の Stieltjes 関数のグラフ。
 ②正の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を拡大したグラフ。
 ③ J. Bohman & C. E. Fröberg の論文にあるものと同じ、sgn(γ(x))*log(1+10^4*Abs(γ(x)))のグラフ。

 複素変数の Stieltjes 関数のグラフ。
  • Stieltjes関数のグラフ(複素変数)
  • Stieltjes関数のグラフ(複素変数)
  • Stieltjes関数のグラフ(複素変数)
  • Stieltjes関数のグラフ(複素変数)
  • Stieltjes関数のグラフ(複素変数)

 J. Bohman & C. E. Fröberg の論文にあるものと同様のグラフ。
  • Stieltjes関数のグラフ(複素変数)

非自明零点の Dirichlet 級数

 唯一の極を解消した Riemann のゼータ関数が、s=0において Maclaurin 級数
Sitaramachandrarao定数の定義式
に展開されるとした場合に現れる係数Sitaramachandrarao定数の記号を、Sitaramachandrarao 定数という。(ここでの記述は、D. H. Lehmer による論文「The sum of like powers of the zeros of the Riemann zeta function」 Mathematics of Computation, vol.50 (1988) pp.265-273 に基づく。)
 Sitaramachandrarao 定数は、極限式
  • Sitaramachandrarao定数の極限定義式
によって定義されるが、この式を直接計算するのは難しい。極限式は複素数sに対しても成立し、これを Stieltjes 関数と同様に「Sitaramachandrarao 関数」Sitaramachandrarao関数の記号として独自に定義する(標準的な名称・記号は存在しない)。
 実際の計算では、上記の極限式に Euler - Maclaurin 総和公式を適用した式
  • Sitaramachandrarao関数の数値計算式
を使用する。ここに正則化不完全ガンマ関数:P(a, z)正則化不完全ガンマ関数Bernoulli数の記号は Bernoulli 数であり、整数mを適当な大きさに設定すれば精度を上げることができる。
 複素関数としての Sitaramachandrarao 関数は、負の整数上でガンマ関数に由来する1位の極を持つ有理型関数である。また、正の実軸上に零点を持つほか複素零点も持つ。それらの位置に Riemann ゼータ関数のような規則性は見られず、グラフの概形も、前述の極の周辺を除いて Stieltjes 関数と似ている。
 Lehmer の論文によれば、Riemann ゼータ関数の非自明零点に関する Dirichlet 級数※1
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)
の引数sが2以上の自然数であるとき、その値は Sitaramachandrarao 定数を用いて
  • 非自明零点に関するDirichlet級数とSitaramachandrarao定数との関係
と表わされる※2。 複素関数としての非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)の記号は、s=1に1位の極を持つ有理型関数である。
 André Voros著「Zeta functions over zeros of zeta functions」 Lecture Notes of the Unione Matematica Italiana, Vol.8 (2010), Springer) によれば、
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)の数値計算式
となる。ここに非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の記号も、Riemann ゼータ関数の非自明零点に関する Dirichlet 級数
非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)
である※1。 これも Euler - Maclaurin 総和公式を適用して得られる式
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の数値計算式
によって計算できる。ここに正則化不完全ガンマ関数:γ*(a, z)は正則化不完全ガンマ関数、Von Mangoldtのラムダ関数の記号は Von Mangoldt のラムダ関数であり、整数mを適当な大きさに設定すれば精度を上げることができる。 複素関数としての非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の記号は、s=1に2位の極、およびsが負の奇数のときに1位の極を持つ有理型関数である。sが正の偶数であるときの非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の記号は、
  • 冪級数の係数に現れる非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)
のように冪級数展開式の係数として求められる。例えば具体的に、
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の特殊値
となる。
 関数非自明零点に関するDirichlet級数の記号は、副次的ゼータ関数(Secondary zeta function)やスーパー・ゼータ関数、またはゼータ・ゼータ関数等の名で呼ばれるが、標準的とされる名称は存在せず一定していない。

【註記】
※1 : 1914年に G. H. Hardy によって、少なくとも臨界線上の非自明零点は無限個存在することが証明されているので、これらは無限級数になる。また、級数の定義方法から分かるとおり、Riemann 予想の成立を仮定している。

※2 : この Dirichlet 級数の値を用いて、Stieltjes 定数を表現することも可能である。例えば、J. B. Keiper の論文「Power series expansions of Riemann's ξ function」 Mathematics of Computation, vol.58 (1992) pp.765-773 等。これまでの結果を大雑把に解釈すれば、母関数や特殊値を介した次のような特殊関数の系列が存在すると言える。
  • ガンマ関数系の特殊関数間の関係図

Sitaramachandrarao関数の記号

 ①実変数の Sitaramachandrarao 関数のグラフ。
 ②負の実数方向へ更に広い範囲を描画する。変曲点が Stieltjes 関数の2倍に近づく。
 ③正の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を拡大したグラフ。振動していることが分かる。

 複素変数の Sitaramachandrarao 関数のグラフ。3番目は、2番目のグラフの原点周辺を拡大した場合。
  • Sitaramachandrarao関数のグラフ(複素変数)
  • Sitaramachandrarao関数のグラフ(複素変数)
  • Sitaramachandrarao関数のグラフ(複素変数)
  • Sitaramachandrarao関数のグラフ(複素変数)
  • Sitaramachandrarao関数のグラフ(複素変数)
  • Sitaramachandrarao関数のグラフ(複素変数)

非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)の記号

 ①実変数の、非自明零点に関する Dirichlet 級数非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)の記号のグラフ。
 ②正の定義域のうち、関数の絶対値が小さくなる部分を確認するため、代わりに10^x*Z(x)を描画したグラフ。 振動していることが分かる。

 複素変数の、非自明零点に関する Dirichlet 級数非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)の記号のグラフ。
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)のグラフ(複素変数)

非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の記号

 実変数の、非自明零点に関する Dirichlet 級数非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の記号のグラフ。xが大きくなるとx軸に漸近するが、非自明零点に関するDirichlet級数(Lehmer型)の記号と異なり振動しない。
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)のグラフ(実変数)

 複素変数の、非自明零点に関する Dirichlet 級数非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)の記号のグラフ。
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)のグラフ(複素変数)
  • 非自明零点に関するDirichlet級数(Voros型)のグラフ(複素変数)

素数ゼータ関数

日:素数ゼータ関数素数ζ関数
英:Prime zeta function,仏:Fonction zeta des nombres premiers,独:Primzetafunktion

 素数の逆数列に関する Dirichlet 級数で表わされる関数
  • 素数ゼータ関数の定義式
は、現在では素数ゼータ関数と呼ばれている※1。この関数については、19世紀後半の J. W. L. Glaisher 等による研究結果が知られているが、後述のとおり、関数の着想自体はもっと古くから存在したと推測される。
 素数ゼータ関数は、Landau - Hurwitz の公式 (ただし、発見者は恐らく Glaisher と思われる。)
  • 素数ゼータ関数のLandau-Hurwitz公式
によってさらに広い領域へ解析接続される。ここにMoebius関数μ(n)Möbius 関数ゼータ関数の記号Riemann のゼータ関数である。
 複素関数としての素数ゼータ関数は、Landau - Hurwitz の公式から明らかなように、正の方向から虚軸に近付くにつれて Riemann ゼータ関数の非自明零点に由来する対数分岐点が集積するため、虚軸が解析関数としての自然境界となる。また、平方因子を含まない自然数をnとするとき、素数ゼータ関数の記号は実軸上の点列s=1/nに対数分岐点を持つ。したがって Dirichlet 級数の形が Riemann のゼータ関数と似ているものの、素数ゼータ関数の複素領域での様相は大きく異なる。
 素数ゼータ関数は主に素数分布論で現れるが、Riemann のゼータ関数に比べると頻度は少ない。L. Euler は Riemann ゼータ関数の素数積表示式を用いて、素数が無限個存在することの新しい証明、および素数の逆数和が発散することの証明を与えた(1737年)。これはs=1における素数ゼータ関数の振る舞いに言及したものと解せられ、バーゼル問題 (→ Riemann のゼータ関数を参照) と状況を比較すれば、素数が自然数の平方数よりも密に分布することが分かる。さらに Euler は発散の速さが
素数の逆数和の漸近評価式
であると主張した。これは厳密な証明を伴っていなかったが、後年の素数分布論にも関係する言及として注目に値する。現在では、この漸近評価式の定数項が
  • Meissel-Mertens定数の定義
と求められており、「Meissel - Mertens 定数」と呼ばれる。ここにEulerの定数は Euler の定数である。

【註記】
※1 : 素数ゼータ関数,副次的ゼータ関数,Fibonacci ゼータ関数等は、一般 Dirichlet 級数
  • 一般Dirichlet級数
に該当するため「ゼータ」を含む名称で呼ばれるが、その性質は多くの点で Riemann のゼータ関数と異なることから、通常はゼータ関数の一種であるとは考えない。

* 素数ゼータ関数は、独自定義の 「素数正弦関数・素数ガンマ関数」 の対数微分を冪級数展開したときの係数としても現れます。

素数ゼータ関数の記号

 ①実変数の素数ゼータ関数のグラフ。
 ②原点に近い実軸上における素数ゼータ関数の実部と虚部のグラフ。

 複素変数の素数ゼータ関数のグラフ。(Mathematicaの組込関数とは異なる分枝切断線を採用しています。)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)

 複素変数のうち、虚軸に近い領域を拡大したグラフ。
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)

 複素変数のうち、原点に近い領域を拡大したグラフ。
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • 素数ゼータ関数のグラフ(複素変数)

Riemann 素数計数関数

日:Riemann素数計数関数
英:Riemann prime counting function, 仏:Fonction de compte des nombres premiers
独:Riemannsche Primzahlfunktion

 一般に広く知られているように素数は自然数の中で不規則に現れる。素数列そのものを定義する方程式や関数を見つけるという研究も古くから存在するが、それらは概ね発展性に乏しく、重要な成果があったとは言い難い※1。そこで多くの数学者は、代わりに素数の出現頻度を個数で捉え、その増加傾向を広い範囲で大まかに評価するという問題に視点を移した。一見すると素数との結びつきが前者に比べて間接的に見えるが、素数ゼータ関数の所でも述べたとおり、その着想は素数が無限個あることの解析的な証明法に起源があり、その後は大いに発展して前者とは比較にならないほどの成果が得られた。
 現在では、素数の出現頻度を見積る方法、およびこれに関連する理論は「素数分布論」と呼ばれており、数論の重要な一分野となっている。特に素数分布論は、複素関数論等で得られた解析学の方法を積極的に数論に援用する「解析的整数論」の主要分野とされる。素数に関する多くの未解決問題、とりわけ Riemann 予想 (→ Riemann のゼータ関数を参照) との重要な接点が19世紀に発見されたため、以降は常に数学者等の関心を集めるようになったが、まだ多くが未解決で残っていることからも分かるように、この分野の研究は相当の困難が伴う。
 素数の個数を捉える具体的な関数はいくつか例があるが、そのうち最も単純な定義は、正の実数x以下の素数の個数を表わす 「素数階段関数」素数階段関数π(x)である※2。すなわち素数階段関数π(x)のグラフはxが素数のときに段差1を持つような階段状になるので、局所的に見れば依然としてランダムに増加する区分定義的で技巧的な関数である。しかしxの範囲を広くすれば、素数階段関数π(x)のグラフは滑らかな曲線と見分けが付かなくなるので、これを扱い易い解析関数で近似しようという発想に自然に導かれる。実際、A. M. Legendre、C. F. Gauss、G. F. B. Riemann など多くの数学者が、より良い素数階段関数π(x)の近似法を発見しようと努めてきた。
 Legendre は1798年に近似
  • Legendreによるπ(x)の漸近評価式
を推察した。しかしこの推察は正しくないことが、1838年に P. L. Chebyshev によって証明された(後述の素数定理に見るように定数1.08366は不要である)。
 Gauss も1792年に
  • Gaussによるπ(x)の漸近評価式
なる近似を推察した。ここに、積分対数関数:li(x)および積分対数関数:Li(x)積分対数関数である (以下同様)。以降、Gauss の近似をいくらか簡略化(積分対数関数をその漸近展開式の第一項で近似)した
素数定理
を「素数定理」と呼ぶようになったが、1896年のほぼ同時に J. S. Hadamard と C. J. de la Vallée-Poussin によって証明された。いずれも、本来の積分対数関数による近似で、より詳しく誤差項の上限評価を伴った
  • 素数定理(誤差項付き)
の形で証明される。この結果は、Riemann ゼータ関数の非自明零点の実部は1より小さいという事実と同値である。誤差項を改良する研究は現在でも続けられているが、1901年に N. F. H. von Koch は、Riemann 予想が正しいと仮定すれば得られる結果
素数定理(最良誤差項付き)
が、誤差項の上限評価のうちで最良になることを示した。(この事実は、素数と Riemann 予想の神秘的な結び付きの一例になっている。)
 一方 Riemann は、ベルリン学士院月報1859年11月号に掲載された有名な論文「与えられた数より小さい素数の個数について」において、素数定理とは別の意味で、素数の個数がゼータ関数の非自明零点と密接に関係していることを明らかにした。それは現在「Riemann - von Mangoldt 公式」と呼ばれている無限級数
  • Riemann-Von Mangoldt公式
であるが、(それまでの近似法を超えて)驚くべきことに素数階段関数π(x)そのものを与える。ここに非自明零点αを渡る総和は、Riemann ゼータ関数における虚部が正である非自明零点αを絶対値の小さい順に総和する(条件収束級数)の意味である。また、引数が冪関数になった積分対数関数は、単なる代入ではなく解析接続による解釈を必要とする。 この公式は、論文における Riemann の説明が厳密でなかったため、1895年に H. C. F. von Mangoldt が正確な証明を与えた。
 Riemann - von Mangoldt 公式の意味を大雑把に(イメージ的に)解釈すれば、補間間隔が不規則な素数列になるように変形された Fourier 級数によって素数階段関数π(x)を表わしたものと捉えられる。この場合、非自明零点αを渡る総和に関する項(Riemann はこれを「周期的な項」と称している)は、Fourier 級数における三角関数に類似した役割を担っている。
 結果的にその後の歴史では、素数定理の証明自体に Riemann - von Mangoldt 公式は必要でなくなり、逆に最良の誤差項評価は Riemann 予想の成立と同値になることが判明したが、恐らく Riemann も素数定理とその誤差項評価を意識して、前述の論文を著したと思われる。
 ところで Riemann - von Mangoldt 公式において、非自明零点αを渡る総和に関する項および後続の積分項等を除いた場合、すなわちf(x)=Li(x)に簡略化した場合に得られる無限級数
Riemann素数計数関数の定義式
は、Riemann 素数計数関数と呼ばれている。後にグラフで見るように、Riemann 素数計数関数自体が、素数階段関数π(x)の増加傾向についての非常に良い近似(誤差が概ね正負均等になる)となっている。
 なお、この関数は 「Gram 級数」 と呼ばれる無限級数
Riemann素数計数関数(Gram級数)
で計算したほうが収束が速い。Gram 級数は、Riemann 素数計数関数の積分対数関数部分を冪級数に展開し、二重和の順序を交換(絶対収束のため交換可能となる)すると得られる。
 複素関数としての Riemann 素数計数関数は、複素平面上z=0に対数分岐点を持つ無限多価関数であり、実軸上の区間(-∞, 0]を分枝切断線とする。また、z=+0の近傍に絶対値が非常に小さい零点が無数に存在する。これは、Jörg - Waldvogel の公式
  • Joerg Waldvogelの公式
によって計算できる※3。ここにρは、Riemann ゼータ関数の全ての非自明零点(すなわち{ρ} = {α} ∪ {1-α})であり※4、第2項の総和はρを絶対値の小さい順にわたる (ただし、非自明零点がすべて単根であると仮定している) 。

【註記】
※1 : 大抵の結果は、入れ子になった累乗や床関数などの区分定義関数を使用した「不自然で技巧的な」関数となるため、そこから素数に関する何らかの知見を得ることはほとんど望めない。
(例えば、P. Ribenboim 著「素数の世界:その探索と発見」第3章が、この点を指摘している。)

※2 :素数階段関数π(x)以外では、第2 Chebyshev 関数ψ(x) (ここでは、第1 Chebyshev 関数には触れない)
  • 第2Chebyshev関数
 等がある。第2 Chebyshev 関数に対する、Riemann - von Mangoldt 公式に相当する式は、
  • 第2Chebyshev関数のRiemann-vonMangoldt公式
 となり、素数階段関数π(x)のそれよりも簡潔なので、現在の素数分布論では、むしろψ(x)の方が多用される (素数定理はψ(x)からも導ける)。

※3 : Folkmar Bornemann の論文 「Solution of a Problem Posed by Jörg Waldvogel, (2003).」 http://www-m3.ma.tum.de/Allgemeines/FolkmarBornemannPublications を参照。(公開はインターネット上のみ。)

※4 : 公式の表記がそれぞれの原論文と一致するよう、ここではαρの意味を使い分けた。

Riemann素数計数関数の記号

 実変数の Riemann 素数計数関数のグラフ。
  • Riemann素数計数関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Riemann 素数計数関数のグラフ。
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)

 実変数の Riemann 素数計数関数R(x^10000)のグラフ。原点に非常に近い正の実軸上にある無数の零点を確認する。
  • Riemann素数計数関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Riemann 素数計数関数R(z^10000)のグラフ。ただし、領域Abs(Arg(z))>π/10000では解析接続によって定義する。
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数関数のグラフ(複素変数)

Riemann素数計数指数関数の記号

 この関数は、Riemann 素数計数関数に指数関数を代入して解析接続したもので、Gram 級数は冪級数
  • Riemann素数計数指数関数の定義式
になる。これは超越整関数であり、絶対値が非常に大きい負数の実零点が無数に存在する。
 実変数の Riemann 素数計数指数関数のグラフ。
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Riemann 素数計数指数関数のグラフ。
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)

 描画領域を非常に大きくした場合の、実変数の Riemann 素数計数指数関数のグラフ。
 つまり(指数関数を代入しない) Riemann 素数計数関数では、零点が原点の右側近傍に圧縮されている。
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(実変数)

 描画領域を非常に大きくした場合の、複素変数の Riemann 素数計数指数関数のグラフ。
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)
  • Riemann素数計数指数関数のグラフ(複素変数)

素数定理等:π(x)との比較

 素数階段関数素数階段関数π(x)と各種近似関数のグラフ。Green:x/(log x), Blue:Li(x), Red:R(x), Black:π(x)
  • 素数階段関数と各種近似関数のグラフ

 素数階段関数π(x)と各種近似関数との商のグラフ。Green:π(x)/(x/(log x)), Blue:π(x)/Li(x), Red:π(x)/R(x)
  • 素数階段関数と各種近似関数との商のグラフ

 素数階段関数π(x)と各種近似関数との差(誤差項)のグラフ。Green:π(x)-x/(log x), Blue:Li(x)-π(x), Red:R(x)-π(x)
 なお、Li(x)-π(x)は常に正数とは限らず符号が無限回変わることを、1914年に J. E. Littlewood が証明した。また、その交代が起きる最小のxが Skewes 数:10^(10^(10^34))以下になることを、1933年に S. Skewes が証明した。2000年現在、その範囲はx≦1.3983×10^316まで狭められているが、非常に大きな数になると考えられている。(詳細は、Wikipedia「スキューズ数」を参照。)
 ①若干狭い範囲のグラフ (x軸は等差間隔目盛)。
 ②より広い範囲のグラフ (x軸は等比間隔目盛)。

 上限評価の誤差項を伴う素数定理のグラフ。Abs(Li(x)-π(x))/(Sqrt(x)*log(x))
  • 上限評価の誤差項を伴う素数定理のグラフ

Riemann-von Mangoldt 公式

 虚部が正であるものを絶対値の小さい順に数えた Riemann ゼータ関数の非自明零点αの個数を、0個、10個、50個、および100個まで考慮した Riemann - von Mangoldt 公式が、素数階段関数π(x)に収束する様子を表わしたグラフ。
(ただしこの場合の素数階段関数π(x)は、不連続となる素数の所で左右極限値の平均となるように定義する。)
  • Riemann-von Mangoldt公式のグラフ

 同様にαの個数を、0個、10個、50個、および100個まで考慮した Riemann - von Mangoldt 公式と素数階段関数π(x)との差、
すなわち(Riemann-von Mangoldt公式)-π(x)のグラフ。
  • Riemann-von Mangoldt公式のグラフ

第2Chebyshev関数

 絶対値の小さい順に Riemann ゼータ関数の非自明零点の組ρを、0個、5個、50個、および500個まで考慮したψ(x)の近似。
(ただしこの場合も、不連続となる所で左右極限値の平均となるように定義する。なおψ(x)のグラフは、xが単一の素数pの正整数乗に等しい自然数となる所で、段差log(p)を持つことに留意。)
  • 第2Chebyshev関数のグラフ

 アニメーション(2.02MB)
 上記の第2 Chebyshev 関数ψ(x)のグラフを動画にする。非自明零点の組ρは、0個~400個まで。
  • 第2Chebyshev関数のグラフ(動画)

Fibonacci ゼータ関数

 Fibonacci 数
Fibonacci数の漸化式
の逆数列に関する Dirichlet 級数
Fibonacciゼータ関数のDirichlet級数
で表わされる関数を、Fibonacci ゼータ関数という。この関数は、超越数の研究に関連して現れたもので、Riemann のゼータ関数と直接関係がある訳ではないが、その級数形を踏まえてこの頁で取り扱う。定義から、明らかにζF(+∞)=2である。
 実際の数値計算、特に領域Re(s)<0においては、
  • Fibonacciゼータ関数の計算定義式
を用いると便利である※1。
 複素関数としての Fibonacci ゼータ関数は、複素平面上において無限個の一位の極
  • Fibonacciゼータ関数の極がある点
を持つ有理型関数である。特に実軸上において、極はFibonacciゼータ関数の実軸上の極、零点はFibonacciゼータ関数の実軸上の零点にある。したがって、複素領域での様相は Riemann のゼータ関数と大きく異なる。
 因みに超越数論では、変数が自然数のときの Fibonacci ゼータ関数の値について、超越数や無理数であるかどうかを問題とする。k∈Nであるとき、次のことが判明している。
ζF(2k)
 すべて超越数。特に、
  • ζF(2)の表示式
ζF(2k-1)
 特にζF(1)は無理数であるが、超越数であるかは不明。他はすべて無理数であるかどうかすら不明。
ここに、θ楕円テータ関数である。

【註記】
※1 : L. Navas「Analytic continuation of the Fibonacci Dirichlet series」The Fibonacci Quarterly, vol.39, (2001) p. 409-418.

Fibonacciゼータ関数の記号

 実変数の Fibonacci ゼータ関数のグラフ。
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Fibonacci ゼータ関数のグラフ。
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(複素変数)
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(複素変数)

 次のグラフ上の平行な直線はすべて等間隔で、実線の交点に Fibonacci ゼータ関数の極がある。
  • Fibonacciゼータ関数のグラフ(複素変数)

Euler 和(調和級数係数の Dirichlet 級数)

日:Euler 和
英:Euler sum, 仏:Somme d'Euler,独:Eulersche Summe

 調和級数の値を係数とする Dirichlet 級数
  • Euler和の定義
は現在、Euler 和 (Euler Sum) と呼ばれている。この関数は、例えば 「NIST - Handbook of Mathematical Functions」 の613頁 (25. 16 (ii)) に記載がある。
 Euler 和は、1742年の 「C. Goldbach からL. Euler への手紙」 の内容に着想を得た Euler が考察を始めたもので、sが2以上の自然数の場合は、Riemann ゼータ関数の特殊値で表わせる。
  • Euler和の特殊値
この結果も、Euler によって得られた。
 なお、次の公式を用いれば、前述の Dirichlet 級数が収束しない複素数sの領域でも計算できる。
  • 複素変数で計算可能なEuler和の公式
ここに、γは Euler の定数、Bernoulli多項式の記号Bernoulli 多項式である。
 調和級数部分を一般化した、
  • 一般Euler和の定義
は一般 Euler 和と呼ばれ※1、同様に特殊値が知られており、またそれらを用いれば他の様々な無限級数の値を表わせる。一般 Euler 和は、szとの間に可換な対称性
  • 一般Euler和が満たす対称的な関数等式
がある。同様に、
  • 複素変数で計算可能な一般Euler和の公式
によって、前述の Dirichlet 級数が収束しない複素数sの領域でも計算できる。ただし、zが非正整数の場合は不定形が生じるので、代わりに閉じた公式
  • zが非正整数の場合の一般Euler和
を用いればよい。
 複素変数sの Euler 和は、大域的なグラフで見た場合は Riemann ゼータ関数を平行移動したものに似ているが、一部分で極の点列を持つため、その周辺ではグラフが大きく異なる。また、虚数方向に連なる複素零点は、一般に直線上には載っていない。

【註記】
※1 : 次の式を 一般 Euler 和とする定義もある。
Euler和の別定義
これは、ここでの 一般 Euler 和の定義と
別定義のEuler和との関係
の関係にある。

Euler和の記号

 実変数の Euler 和Euler和の記号のグラフ。
  • Euler和のグラフ(実変数)

 複素変数の Euler 和Euler和の記号のグラフ。
  • Euler和のグラフ(複素変数)
  • Euler和のグラフ(複素変数)
  • Euler和のグラフ(複素変数)
  • Euler和のグラフ(複素変数)
  • Euler和のグラフ(複素変数)

一般Euler和の記号

 実変数の一般 Euler 和一般Euler和の記号のグラフ。
  • 一般Euler和のグラフ(実変数)

 複素変数の一般 Euler 和一般Euler和の記号のグラフ。
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)

 実変数の一般 Euler 和一般Euler和の記号のグラフ。
  • 一般Euler和のグラフ(実変数)

 複素変数の一般 Euler 和一般Euler和の記号のグラフ。
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)

 複素変数の一般 Euler 和一般Euler和の記号のグラフ。
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)
  • 一般Euler和のグラフ(複素変数)

Riesz 関数

日:Riesz 関数リース関数
英:Riesz function, 仏:Fonction de Riesz,独:Riesz funktion

 Riesz 関数は、冪級数展開式
Riesz関数の冪級数展開式
で定義される関数で、もし、
Riemann予想と同値なRiesz関数の命題
が成立するならば、Riemann 予想も成立する (必要十分条件でもある) ことが、1916年に M. Riesz によって示されたので、以後この関数名が与えられている。つまり、Riesz 関数の重要性は、Riemann ゼータ関数の偶数での特殊値と非自明零点との関係を表現している所にある。
 そのため数値計算においても、引数が極端に大きい正数での Riesz 関数の振る舞いが関心事となる。ところが、上記の冪級数の収束半径は理論上∞であるものの、実際は丸め誤差が累積するため有界領域でしか求められない (この事は多くの同様の冪級数にも言える) ので、これを改善する様々な方法が考えられている。例えば、
  • より良いRiesz関数の級数展開式
は、より広い複素領域で実際の数値計算が可能になる。また、Riesz 関数の漸近評価式
  • Marek WolfによるRiesz関数の漸近評価式
が Marek Wolf によって (Riemann 予想の成立を仮定して) 与えられている※1。この結果から、Riesz 関数は正の実軸上に絶対値が非常に大きい零点を無数に持つことが分かる。
 Riesz 関数の冪級数展開式が、Riemann 素数計数指数関数R(exp(z))に類似していることに着目すれば、後者に対して Jörg - Waldvogel の公式を導く方法が、そのまま Riesz 関数にも応用できて、
  • Riesz関数の新しい漸近評価式
が得られる※2。ここにρは、Riemann ゼータ関数の全ての非自明零点ζ(ρ)=0, 0<Re(ρ)<1をわたる (ただし、非自明零点がすべて単根であると仮定) 。この式は数値計算をさらに容易にするとともに、初等的な式変形によって、M. Wolf の漸近評価式を再び導くことができる※2。
 Riesz 関数に類似した関数
Hardy-Littlewood関数の冪級数展開式
が、既に G. H. Hardy と J. E. Littlewood によって導入されている (例えば、鹿野 健 (編著) 「リーマン予想」 (日本評論社 1991年) の92頁に記載例あり) 。この関数の統一的名称はまだ無いので、ここでは 「Hardy - Littlewood 関数」 と称するとともに、関数記号を上記のとおりとする。
 もし、
  • Riemann予想と同値なHardy-Littlewood関数の命題
が成立するならば、Riemann 予想も成立する (必要十分条件でもある) 。すなわち Hardy - Littlewood 関数は、Riemann ゼータ関数の奇数での特殊値と非自明零点との関係を表現する。
 Hardy - Littlewood 関数も、正の実軸上に絶対値が非常に大きい零点を無数に持ち、Riesz 関数と状況が良く似ている。Hardy - Littlewood 関数に関する公式
  • Hardy-Littlewood関数の各種公式
も、Riesz 関数で用いた方法を応用すれば得られる。

【註記】
※1 : M. Wolf の論文 「Evidence in favor of the Baez-Duarte criterion for the Riemann hypothesis」 Computational Methods in Science and Technology, 14 (1), p.47-54 (2008) を参照。

※2 : 後述の 「Riesz 関数の漸近公式について」 で、この事の証明と検証結果を掲示していますので、併せて参照願います。

Riesz関数の記号

 実変数の Riesz 関数のグラフ。
  • Riesz関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Riesz 関数のグラフ。
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)

 実変数の Riesz 関数のグラフ。正の実軸上にある零点を確認するため、非常に広い範囲を描画するとともに、漸近評価式との比較も行う。
  • Riesz関数のグラフ(実変数)
  • Riesz関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Riesz 関数のグラフ。正の実軸上にある零点を確認するため、非常に広い範囲を描画する。
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)
  • Riesz関数のグラフ(複素変数)

 アニメーション(10.50MB)
 複素変数の Riesz 関数のグラフ。原点周辺の狭い範囲から非常に広い範囲に描画領域を拡大する動画。
  • Riesz関数のグラフ(複素変数:動画)

Hardy-Littlewood関数の記号

 実変数の Hardy - Littlewood 関数のグラフ。
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Hardy - Littlewood 関数のグラフ。
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)

 実変数の Hardy - Littlewood 関数のグラフ。正の実軸上にある零点を確認するため、非常に広い範囲を描画するとともに、漸近評価式との比較も行う。
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(実変数)
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(実変数)

 複素変数の Hardy - Littlewood 関数のグラフ。正の実軸上にある零点を確認するため、非常に広い範囲を描画する。
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)
  • Hardy-Littlewood関数のグラフ(複素変数)

Riesz関数の漸近公式についての見出し

【新しい漸近公式】
 Riemann ゼータ関数の非自明零点がすべて単根 (1位) であると仮定すると、
  • Riesz関数の新しい漸近評価式
 
は、実は当サイト管理人である私が独自に導いたものですが、既に説明したように Folkmar Bornemann の論文 「Solution of a Problem Posed by Jörg Waldvogel, (2003).」 http://www-m3.ma.tum.de/Allgemeines/FolkmarBornemannPublications (公開はインターネット上のみ) にある方法を応用して導出した公式であり、私の独創だけで得られた結果ではありません。
 しかし、この公式は恐らく他に言及例が無いと思われ、また、公式の右辺第2項は級数の初項のみをとると M. Wolf の漸近評価式と一致する等、面白い事実も判明したので、以下、その導出過程を掲示することにしました。

【証明】
 次の関数を用意する。
  • 経路積分の被積分関数 f(z,t)
これは、やや天下り的ではあるものの、右辺の第1項の形は、Riesz 関数の元々の定義式である冪級数
Riesz関数の冪級数展開式
の形によって推察できる。右辺の第2項の形によって、関数f(z,t)の極は
  • 関数f(z,t)の極
で網羅されることが分かる。①, ②はすべて1位の極である。③は上記の仮定によりすべて1位となる。それぞれの極に対する留数は、n=1,2,3,...とするとき、
  • 関数f(z,t)の極における留数
となる。ここに、②の式変形では次の公式を用いる。
  • ②の式変形で用いる公式
 ここで、f(z,t)を Fig.1 のような経路に沿って積分する。ただし、積分経路の進行方向に対して極①と極②,③とが互いに別々の側にあることに由来して、符号の違いが生じることに注意する。よって留数定理から、
  • f(z,t)に留数定理を適用して得られる式
となる (留数定理は積分経路が閉曲線であることを条件とするが、Fig.1 の経路でも Riemann 球面上に写像すれば本質は閉曲線であることが分かる) 。ゆえに、両辺を整理すれば目標の公式が得られる。■

  • Riesz 関数に関する積分経路図
(Fig.1) Riesz 関数に関する積分経路図

 因みに、Hardy - Littlewood 関数の場合は、次の関数を上記と同じ経路で積分し、留数定理を適用すると同様の公式が得られる。(したがって、導出過程は掲示しない。)
  • 経路積分の被積分関数 g(z,t)

セパレータ(*******)
【Marek Wolf の漸近評価式との関係】
 上記の新しい漸近公式から、容易に M. Wolf の漸近評価式を導くことができる。
 新しい漸近公式の右辺第1項は、いかなる自然数nの級数項でも極限z→+∞によって0に近付くことが、その形から自明である。よって、この極限では右辺第2項のみを考えれば良い。
 非自明零点ρが Riemann 予想を満たすと仮定して、そのうち実軸より上部にあるものを1/2+τn i、実軸より下部にあるものを1/2-τn i (絶対値の小さい零点から順にn=1,2,3,...) と表記するとき、右辺第2項は
  • 右辺第2項の式変形1
となる。さらに、ゼータ導関数の共役関係式, ガンマ関数の共役関係式、およびde Moivreの公式を用いれば、
  • 右辺第2項の式変形2
となり、単振動 (余弦+正弦関数) の合成公式によって、新しい漸近評価式
  • 右辺第2項の式変形3
が得られる。ここで、級数項をn=1のみに限ると
  • Marek Wolfの漸近評価式
となり、これは M. Wolf の漸近評価式に他ならない。なぜなら実際に、
  • Marek Wolfの漸近評価式における各定数
となるからである。
 新しい漸近評価式においてz∈Rならば、正弦関数部分は区間[-1,1]内の値に収まるので、各級数項の寄与はA(n)の大きさによって決まる。n>1以降のA(n)をいくつか求めると、
  • 漸近評価式の係数A(n)の値
となっており、その寄与はA(1)と比べて小さい。実際に、新しい漸近公式をn番目の項までの有限級数としてグラフにすると、n=1でほぼ概形が決まり、n>1以降の概形はほとんど変化しないことが確認できる (Fig.2) 。

  • 新しい漸近評価式の有限級数部分のグラフ
(Fig.2) 新しい漸近評価式の有限級数部分のグラフ

 以上の結果から、新しい漸近評価式は上限・下限値
  • 漸近評価式の上限・下限
を超えない。Riemann-Siegel シータ関数およびその逆関数の増大傾向は、
  • Riemann-Siegelシータ関数とその逆関数の増大傾向
となるから、τnの頻度が Gram 点の頻度に等しいと仮定するとき、集合上限評価点の集合は Gram 点の集合Gram点の集合よりも密に分布する (Fig.3) 。

  • Riemann-Siegelシータ関数とその逆関数の増大傾向
(Fig.3) Riemann-Siegel シータ関数とその逆関数の増大傾向

したがって、
  • 漸近評価式の上限・下限値の見積
となる。最後尾の無限級数は急速に値0.001590705871879435...に近付く (Fig.4) 。ゆえにCは正の有界値である。

  • 上限値へ収束する点列のグラフ
(Fig.4) 上限値へ収束する点列のグラフ

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