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高階微分方程式の Painlevé 超越関数
第1a種 Chazy 超越関数
P. Painlevé 等が2階の代数的な非線形常微分方程式に対して得た成果、すなわち、その方程式の解が動く特異点として極のみを持つ(Painlevé 性を持つ)場合を具体的に特定・分類したことを、階の代数的な非線形常微分方程式に拡張することは、既に Painlevé の時代から着手されていたが、現在でも解決されていない。C. É. Picard は、2階以上の一般的な代数的非線形常微分方程式に対する分類を試みていたが、Painlevé 性を持たない場合をも含めて考察したため困難を極め、達成できなかった。
3階の場合で Painlevé 性を持つような方程式のいくつかを、1910~1911年に J. Chazy が例示している※1。特にそのうち、第3種,第12種 Chazy 方程式の解は自然境界を持ち、複素平面の一部分を存在領域とする保型関数を含み、しかもその自然境界自体が動くことを示した。これは2階以下の場合には見られない現象で、このことが3階以上の分類を難しくしている一因とも考えられている。第9種,第10種 Chazy 方程式の解は、種数2の Abel 関数と楕円関数を合成した関数で表わされるとの指摘がある。Chazy 方程式の中では、保型関数との絡みもあって第3種,第12種に関する研究が多いようである。
Chazy の例示した方程式のいくつかは、係数関数として任意の楕円関数,Lamé 関数等を含むものがあり、これらの解の計算は非常に困難と思われる。そこで、ここではこのような例は扱わず、第3種,第9種,第10種,および第12種も前述の理由から扱わない。さらに実際に計算を試みて、その結果が二重周期関数となる第7種も扱わない※2。第1f 種は、簡単な式変形によって解が楕円関数または第1種 Painlevé 超越関数となることが明らかなので、これも扱わない。結局、ここで取り扱う Chazy 方程式の解である「Chazy 超越関数」は、第1a種,第1b種,第1c種,第1d種,第1e種,第8種,第13a種,および第13b種である。
ここではさらに他の例として、U. Muğan & F. Jrad 「Non-polynomial third order equations which pass the Painlevé test」(Zeitschrift für Naturforschung 59A (2004) p.163-180) の165頁および166頁にある3例を、独自に「第1種,第2種,および第3種 Muğan - Jrad 超越関数」と称して取り扱う (このような研究はまだ新しく、微分方程式自体に標準的な名称がない)。
このように、現在まで世界中の数学者によって Painlevé 性を持つ非線形常微分方程式の例が多数発見されているが、3階以上の場合についての分類は完成しておらず、各階の方程式の最小個数は知られていない。
第1a種 Chazy 方程式
の解を、ここでは具体的にと表記し、第1a種 Chazy 超越関数と呼ぶ。ここに、
である。なお、統一的な関数記号はまだ存在していないため、この頁での記号はすべて独自に設定したものである。
また、この頁の関数は主に、W. Fair と Y. L. Luke による連分数近似法を拡張した方法によって計算した。
【註記】
※1 J. Chazy の原論文の他、比較的新しい下記論文で Chazy 方程式の種類を確認することができる。
Y. Y. Bagderina 「Equivalence of Third-Order Ordinary Differential Equations to Chazy Equations I –XIII」, Studies in Applied Mathematics, No.120 (2008) p.293-332.
※2 「Mathematica 関連」に掲載しているコード「Chazy.m」は、第3種,第7種,第9種,第10種,および第12種についても搭載しています。(ただし、第3種,第12種の自然境界近傍は不正確です。)
※1 J. Chazy の原論文の他、比較的新しい下記論文で Chazy 方程式の種類を確認することができる。
Y. Y. Bagderina 「Equivalence of Third-Order Ordinary Differential Equations to Chazy Equations I –XIII」, Studies in Applied Mathematics, No.120 (2008) p.293-332.
※2 「Mathematica 関連」に掲載しているコード「Chazy.m」は、第3種,第7種,第9種,第10種,および第12種についても搭載しています。(ただし、第3種,第12種の自然境界近傍は不正確です。)
実変数の第1a種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1a種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1a種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1a種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1a種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1a種 Chazy 超越関数のグラフ。
第1b種 Chazy 超越関数
第1b種 Chazy 方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第1b種 Chazy 超越関数と呼ぶ。ここに、
である。
実変数の第1b種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1b種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1b種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1b種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1b種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1b種 Chazy 超越関数のグラフ。
第1c種 Chazy 超越関数
第1c種 Chazy 方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第1c種 Chazy 超越関数と呼ぶ。ここに、
実変数の第1c種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1c種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1c種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1c種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1c種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1c種 Chazy 超越関数のグラフ。
第1d種 Chazy 超越関数
第1d種 Chazy 方程式また、第1d種 Chazy 方程式において両辺を微分したのち、変換によって得られる
となる。
実変数の第1d種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1d種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1d種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1d種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1d種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1d種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1d種 Chazy 超越関数の導関数のグラフ。
複素変数の第1d種 Chazy 超越関数の導関数のグラフ。
実変数の第1d種 Chazy 超越関数の導関数のグラフ。
複素変数の第1d種 Chazy 超越関数の導関数のグラフ。
第1e種 Chazy 超越関数
第1e種 Chazy 方程式の関係にある。
実変数の第1e種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1e種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1e種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1e種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第1e種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第1e種 Chazy 超越関数のグラフ。
第8種 Chazy 超越関数
第8種 Chazy 方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第8種 Chazy 超越関数と呼ぶ。ここに、
である。
実変数の第8種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第8種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第8種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第8種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第8種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第8種 Chazy 超越関数のグラフ。
第13a種 Chazy 超越関数
第13a種 Chazy 方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第13a種 Chazy 超越関数と呼ぶ。ここに、
である。
実変数の第13a種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第13a種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第13a種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第13a種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第13a種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第13a種 Chazy 超越関数のグラフ。
第13b種 Chazy 超越関数
第13b種 Chazy 方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第13b種 Chazy 超越関数と呼ぶ。ここに、
である。
実変数の第13b種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第13b種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第13b種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第13b種 Chazy 超越関数のグラフ。
実変数の第13b種 Chazy 超越関数のグラフ。
複素変数の第13b種 Chazy 超越関数のグラフ。
第1種 Muğan - Jrad 超越関数
U. Muğan と F. Jrad による非線形常微分方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第1種 Muğan - Jrad 超越関数と呼ぶことにする。ここに、
である。特別な場合の第1種 Muğan - Jrad 超越関数は、対数微分すると第2種 Painlevé 超越関数になる。すなわち
の関係にある。
実変数の第1種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第1種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
実変数の第1種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第1種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
実変数の第1種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。(対数微分すると第2種 Painlevé 超越関数となり、特に、それが Hastings - McLeod 解になる場合。)
複素変数の第1種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
第2種 Muğan - Jrad 超越関数
U. Muğan と F. Jrad による非線形常微分方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第2種 Muğan - Jrad 超越関数と呼ぶことにする。ここに、
である。
実変数の第2種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第2種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
実変数の第2種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第2種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
実変数の第2種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第2種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
第3種 Muğan - Jrad 超越関数
U. Muğan と F. Jrad による非線形常微分方程式の解を、ここでは具体的にと表記し、第3種 Muğan - Jrad 超越関数と呼ぶことにする。ここに、
実変数の第3種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第3種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
実変数の第3種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第3種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
実変数の第3種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
複素変数の第3種 Muğan - Jrad 超越関数のグラフ。
高階 Painlevé 方程式の古典関数解
第2種 Painlevé 方程式に相当する、より高階の代数的な非線形常微分方程式で、その解が Painlevé 性を持つものとして、
が知られている。ここに、任意関数に対する微分演算子は、
で定義される。の一般解をと表記すると、が整数分だけ異なる場合の解は、すべて Bäcklund 変換
によって求めることができる。特にが整数のとき、は有理関数で表わされる解を含む。それらは、
の対数微分
としても表わすことができる。これらの関数も、Yablonskii - Vorob'ev 多項式の場合と同様に、組合わせ論等での応用が知られている。
以上の結果はすべて、が第2種 Painlevé 方程式の自然な高階化となっていることを示している。同様に第4種 Painlevé 方程式等についても、高階化された非線形常微分方程式の系列が知られている。このような構造は「Painlevé 階層 (Painlevé hierarchy)」と呼ばれており、まだ全貌が不明な3階以上の代数的非線形常微分方程式の分類も視野に入れた、種々の Painlevé 階層の探索、より一般的な非線形偏微分方程式に対する階層構造を見つける研究等が進められている。例えば、前述の微分演算子を用いた偏微分方程式
の系列は、Korteweg - de Vries 方程式の階層 (KdV hierarchy) となっている。
4階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の実変数グラフ。
4階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の複素変数グラフ。最後のグラフは、暗点が零点,明点が極である (以下同様)。
4階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の実変数グラフ。
4階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の複素変数グラフ。
4階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式の複素変数グラフ。多項式であることを踏まえて絶対値と偏角のグラフに留めるが、絶対値が非常に大きくなるので、3次元のグラフの値域は対数目盛とする。
=1~25の4階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式の零点を、単一の複素平面上に重ね書きする。
4階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の極が、4階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式のどちらの零点に由来するかを、前者は橙色, 後者は水色で表示する。
(前述の対数微分形から、有理関数解の分母は必ず2個の4階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式の積になる。以下同様。)
6階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の実変数グラフ。
6階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の複素変数グラフ。
6階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の実変数グラフ。
6階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の複素変数グラフ。
6階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式の複素変数グラフ。同様に絶対値と偏角のグラフに留め、3次元のグラフの値域は対数目盛とする。
=1~25の6階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式の零点を、単一の複素平面上に重ね書きする。
6階第2種 Painlevé 方程式の有理関数解の極が、6階 Yablonskii - Vorob'ev 多項式のどちらの零点に由来するかを、前者は橙色, 後者は水色で表示する。