特殊関数 グラフィックスライブラリー
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カタストロフィー理論の特殊関数
Pearcey 積分関数
2変数の関数としての積分は、1946年に T. Pearcey によって初めて考察されたので、現在は、Pearcey 積分関数 (または、Pearcey 積分) と呼ばれる。ここに、関数については後述の 「余次元4の尖点正準積分関数」 を参照。
Pearcey 積分関数をの冪級数に展開すると
となる。また、の場合は
のように Bessel 関数に還元される。
Pearcey 積分関数はに関して、
Pearcey 積分関数は、カタストロフィー理論における尖点 (Cusp catastrophe) と呼ばれる分岐現象に関連する※1。これは、後述の 「余次元の尖点正準積分関数」 において、
の形状で説明される。またこの場合は、を座標に含めて代数曲面にした
を用いて、このカタストロフィーが説明されることもある※2。
カタストロフィー理論自体は、微分方程式や差分方程式などによって記述される力学系が、パラメーターの連続変化に応じて定性的に異なる複数の解空間へ分岐する現象を説明するために、R. F. Thom によって導入された。Thom は、このような分岐を生ずる曲面構造をカタストロフィーと呼び、(「初等カタストロフィー」 の場合は) 7種類の分岐点形状 「折り目,尖点,燕尾点,蝶点,楕円的臍点,双曲的臍点,放物的臍点」 に分類できることを示した。
【註記】
※1 取りあえず、この頁で扱う関数を 「カタストロフィー理論の~」 としたが、実際にカタストロフィー理論でどのように用いられるかは、ここでは触れない (実のところ、カタストロフィー理論が難解なため詳細は分からない)。
内容は、「NIST Handbook of Mathematical Functions」 を参考にしているので、正確な意味はそちらを参照願います。また、Pearcey 積分関数を別にすれば、ここでの各関数の英語名は恐らく通称ではなく (「NIST」 にも、標準的な命名法は無い旨の記述がある)、日本語名もまだ存在しないため、さらにこれを意訳したものである。
※2 この場合視覚的には、構造安定性が 「破綻」 する分岐点が、原点になることが分かる。
※1 取りあえず、この頁で扱う関数を 「カタストロフィー理論の~」 としたが、実際にカタストロフィー理論でどのように用いられるかは、ここでは触れない (実のところ、カタストロフィー理論が難解なため詳細は分からない)。
内容は、「NIST Handbook of Mathematical Functions」 を参考にしているので、正確な意味はそちらを参照願います。また、Pearcey 積分関数を別にすれば、ここでの各関数の英語名は恐らく通称ではなく (「NIST」 にも、標準的な命名法は無い旨の記述がある)、日本語名もまだ存在しないため、さらにこれを意訳したものである。
※2 この場合視覚的には、構造安定性が 「破綻」 する分岐点が、原点になることが分かる。
実1変数の Pearcey 積分関数のグラフ。
実2変数の Pearcey 積分関数のグラフ。
燕尾点正準積分関数
3変数の関数としての積分を、燕尾点正準積分関数 (Swallowteil canonical integral function) という。(関数については「余次元4の尖点正準積分関数」を参照。)
この関数は、の冪級数に展開すると
となる。
燕尾点正準積分関数はに関して、
燕尾点正準積分関数は、カタストロフィー理論における燕尾点 (Swallowteil catastrophe) と呼ばれる分岐現象に関連する。これは、後述の 「余次元の尖点正準積分関数」 において、
の形状で説明される。
実1変数の燕尾点正準積分関数のグラフ。順に、①, ②, ③。
実2変数の燕尾点正準積分関数のグラフ。
実2変数の燕尾点正準積分関数のグラフ。
実2変数の燕尾点正準積分関数のグラフ。
実2変数の燕尾点正準積分関数のグラフ。
アニメーション(8.23MB)
実2変数の燕尾点正準積分関数のグラフ。=0~10 (+0.2)。
楕円的臍点正準積分関数
3変数の関数としての積分を、楕円的臍点正準積分関数 (Elliptic umbilic canonical integral function) という。
この関数を、の冪およびの Airy 関数項の級数に展開すると、
となる。
楕円的臍点正準積分関数は平面において、原点中心の120回転に関して不変である。また、
楕円的臍点正準積分関数は、カタストロフィー理論において楕円的臍点 (Elliptic umbilic catastrophe) と呼ばれる分岐現象に関連する。その形状を説明する3次元代数曲面は、代数方程式
によって得られるパラメータ表示式
で表わされる。
実1変数の楕円的臍点正準積分関数のグラフ。順に、①, ②。
実2変数の楕円的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の楕円的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の楕円的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の楕円的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の楕円的臍点正準積分関数のグラフ。
双曲的臍点正準積分関数
3変数の関数としての積分を、双曲的臍点正準積分関数 (Hyperbolic umbilic canonical integral function) という。
この関数を、の冪級数に展開すると、
となる。
双曲的臍点正準積分関数は平面において、直線 (の交換) に関して不変である。また、
双曲的臍点正準積分関数は、カタストロフィー理論において双曲的臍点 (Hyperbolic umbilic catastrophe) と呼ばれる分岐現象に関連する。その形状を説明する3次元代数曲面は、代数方程式
によって得られるパラメータ表示式
で表わされる。
実1変数の双曲的臍点正準積分関数のグラフ。順に、①, ②。
実2変数の双曲的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の双曲的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の双曲的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の双曲的臍点正準積分関数のグラフ。
実2変数の双曲的臍点正準積分関数のグラフ。
余次元4の尖点正準積分関数
余次元 (Codimension ※1) をとするとき、個の変数の関数としての積分を、余次元の尖点正準積分関数という。
この関数は、変数の冪級数に展開すると
となる。
余次元の尖点正準積分関数は、カタストロフィー理論において 「余次元の尖点」 と呼ばれる分岐現象に関連する。その形状を説明する次元代数曲面は、代数方程式
によって得られるパラメータ表示式
で表わされる。
特に、の場合は Pearcey 積分関数、の場合は燕尾点正準積分関数になる。ここでは、すなわち
である場合 (Butterfly catastrophe と呼ばれる) を扱う。このとき、先のパラメータ表示式は具体的に
となる。
【註記】
※1 「NIST Handbook of Mathematical Functions」 にある用語を使用。 同著の Chapter36 「Integrals with Coalescing Saddles」 を参照。
※1 「NIST Handbook of Mathematical Functions」 にある用語を使用。 同著の Chapter36 「Integrals with Coalescing Saddles」 を参照。
実2変数の余次元4尖点正準積分関数のグラフ。
実2変数の余次元4尖点正準積分関数のグラフ。
実2変数の余次元4尖点正準積分関数のグラフ。
実2変数の余次元4尖点正準積分関数のグラフ。
実2変数の余次元4尖点正準積分関数のグラフ。
実2変数の余次元4尖点正準積分関数のグラフ。
Kelvin's ship-wave pattern
充分な水深のある水面上を一定速度で直線航行する船舶は、その後方に歪三角形状の表面波を生ずる。この波の模様は、Kelvin's ship - wave pattern と呼ばれ、その名称は、19世紀末に水面の振動現象を研究した Lord. Kelvin に因む。極座標において、船舶 (に相当する擾乱点) の位置を常に原点に固定し、船舶の航行と逆方向に始動径があるようにすると、任意の位置における Kelvin's ship - wave pattern の波の高さは、次式で与えられる。
この積分は変数を実数に限れば、中点法等による数値計算が可能である※1。なお、変換によって直交座標に移行してもよい。(以下のグラフもこれを採用している。)
Kelvin's ship - wave pattern の積分は、余次元の尖点正準積分関数をさらに一般化した
Kelvin's ship - wave pattern は船舶と水面との相互作用以外にも、例えば、対流圏において山頂等が擾乱点となる場合に形成される雲の模様にも現れることで知られている。(そのような事例は、Google等で画像検索すると見ることができる。)
【註記】
※1 : この積分は、被積分関数が積分端点に近付くほど激しく振動する (真性特異点を持つ) ので、若干計算が難しい。ここでの計算は、改良された中点法に基づいて Kay Herbert が作成した Mathematica コード (http://demonstrations.wolfram.com/KelvinShipWavePattern/) を用いた。
※1 : この積分は、被積分関数が積分端点に近付くほど激しく振動する (真性特異点を持つ) ので、若干計算が難しい。ここでの計算は、改良された中点法に基づいて Kay Herbert が作成した Mathematica コード (http://demonstrations.wolfram.com/KelvinShipWavePattern/) を用いた。
Kelvin's ship - wave pattern のグラフ。2番目は 「NIST Handbook of …」 p.791にあるグラフとほとんど同等である。
Kelvin's ship - wave pattern を用いて、夕刻 (または夜明?) の海上の風景を構成する。