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特殊関数 応用編

水素原子の電子の存在確率

 原子核と電子との間に働く Coulomb 力が、両者の距離rを変数とするポテンシャル関数V(r)に基づくとするとき、電子の分布を表わす波動関数ψを解とする Schrödinger 方程式は、
  • ポテンシャルV(r)のSchrödinger方程式
となるが、一般的な原子の場合はV(r)の形が複雑になるため解くことができない。しかし水素原子の場合は、陽子1個分に対して電子1個分の単純な構造となっており、陽子は電子の約1836倍の質量があるので、水素原子の陽子は固定されていると仮定できる。このため「多体問題」が生じず、水素原子の場合は具体的な形に解くことができる。また水素原子において、陽子だけを価数Zの一般的な原子核に置き換えた仮想の原子、いわゆる「水素様原子」(「水素型原子」 ともいう)の場合も、同様に解くことができる。
 水素様原子(Z=1のときは水素原子)のポテンシャル関数は
  • 水素様原子のポテンシャル関数
となるため、 Schrödinger 方程式は
水素様原子のSchrödinger方程式
となる。これを直交座標系から球座標系への変換式直交座標系から球座標系への変換式直交座標系から球座標系への変換式直交座標系から球座標系への変換式によって直交座標系から球座標系球座標系に変換し、
ψ=R(r)*Y(θ,φ)
のように変数分離されるとすれば、R(r)とY(θ,φ)の満たす微分方程式と解としての具体的表示は、かなりの計算を経て
  • 角度方向の微分方程式とその解
および、
  • 動径方向の微分方程式とその解
のように球面調和関数および Laguerre 陪関数で表わされる。ここに、aは「Bohr 半径」と呼ばれる物理量で、固有エネルギーは
固有エネルギー
となる。動径方向のRに含まれる定数を具体的に決定すると、最終的に Schrödinger 方程式の解ψは、
  • 水素様原子のSchrödinger方程式の解
となり、水素原子中の電子の存在確率は、ψの絶対値の2乗で表わされる。
 因みに、ψn,0,0は角運動量が零の「s状態」、ψn,m,1は角運動量が換算Planck定数の「p状態」である。s状態を古典力学で考えようとすると、電子は原子核に落ちてその軌道が保てないこととなる。これは現実と矛盾する結論である。しかし量子力学によれば、s状態でも電子は軌道を有することが説明できる。

(注)以下の描画では、Bohr 半径をa=1、価数をZ=1とする。

動径方向の波動関数

 ここでは、動径方向のみについて波動関数を見る。すなわち、
  • 動径方向の水素様原子のSchrödinger方程式の解
の絶対値の2乗を考える。
 ①l=0,n=1~9 (+1)。②l=1,n=2~9 (+1)。③l=2,n=3~9 (+1)。

 次は、前のグラフと同じ意味であるが、単に異なるレイアウトで描画したものである。
 ①l=0,n=1~9 (+1)。②l=1,n=2~9 (+1)。③l=2,n=3~9 (+1)。

電子の存在確率の「雲」

(注)色は疑似カラーであり、現実とは異なる。また、中心に原子核の位置を表わす点を置いたが、実際の原子核はそれよりもはるかに小さい。
 s状態:水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, (n=1, 2, 3, 4)
  • 電子の存在確率の雲(s状態)

 p状態:①水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, ②水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, (n=2, 3, 4, 5)

 d状態:①水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, ②水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, ③水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, (n=3, 4, 5, 6)

 f状態:①水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, ②水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, ③水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, ④水素様原子のSchrödinger方程式の解の記号, (n=4, 5, 6, 7)

調和振動子の存在確率

 結晶内の原子が、熱エネルギーによって振動する場合などの格子振動現象は、古典力学での単振り子やバネの運動を量子力学によって量子化したもので説明できる。
 最も簡単な1次元的な原子の並びを考えて、原点からの距離に比例する引力が各原子に影響しているとする。古典力学的な1次元調和振動子のポテンシャルエネルギー関数V(x)
  • 1次元調和振動子のポテンシャル関数
となるので、これを量子力学に置き換えた場合の Schrödinger 方程式は
調和振動子のSchrödinger方程式
となる※1。ここに、Eは固有エネルギーで
  • 調和振動子の固有エネルギーの式
となる。波動関数が無限遠点で0になるという現実的な条件を課すと、nは整数でなければならないという結果が導かれる。よって、最もエネルギーが低いn=0の状態でも、固有エネルギーは0ではなく調和振動子の最低固有エネルギーになることが分かる。つまり、絶対零度でも格子上の原子は振動している。
 さて、先の Schrödinger 方程式の解は
  • 調和振動子のSchrödinger方程式の解
となり、1次元調和振動子の存在確率は、第1種 Hermite 関数を用いて(絶対値の2乗で)表わされる。
 2次元・3次元調和振動子の存在確率は、Schrödinger 方程式が変数分離形になるため、単に
  • 調和振動子のSchrödinger方程式の解
の絶対値の2乗となるだけである。
 結晶内の原子は3次元格子なので、3次元調和振動子が現実的であるが、これは描画が困難である。よって、以下では1次元・2次元調和振動子を描画する。また簡単のため、バネ定数と換算 Planck 定数は1とする。

【註記】
※1:古典的な Newton 力学に従う1次元運動の場合、その物理系の Hamilton 関数Hamilton関数は、ポテンシャルエネルギー関数をV(x)とするとき
Hamilton関数
となる (右辺の第1項は、運動エネルギーを表わす)。この場合、Hamilton 関数を量子化した「Hamilton 演算子」
  • Hamilton演算子
によって、Newton 方程式を置き換えた
Schrödinger方程式
が Schrödinger 方程式となる。

1次元調和振動子

 ①1次元調和振動子の存在確率を表わす波動関数1次元調和振動子の波動関数, n=0~9 (+1)。②1次元調和振動子の波動関数

 次は、前のグラフを異なるレイアウトで描画したものである。n=0~10 (+1)。
  • 1次元調和振動子の波動関数のグラフ

2次元調和振動子

 2次元調和振動子の存在確率を表わす波動関数。順に、①2次元調和振動子の波動関数, ②2次元調和振動子の波動関数, ③2次元調和振動子の波動関数, ④2次元調和振動子の波動関数
 格子の内部より、辺や頂点に位置する原子核の周囲のほうが、電子の存在確率が高くなることが、このグラフから分かる。

楕円形膜の振動

 太鼓などの膜の振動現象は、膜の形状が簡単であれば特殊関数を用いて表わせる。円形膜の場合は、動径方向に第1種 Bessel 関数が現れる事例として、多くの書籍・ウェブサイト等で詳しい解説がある。
 ここでは、比較的取り上げられることが少ない事例として、第1種 Mathieu 関数が現れる楕円形膜の場合を扱う (方法そのものは円形膜の場合と変わらない)。
 速さcの振動が、任意の2次元形状の膜を伝わる場合を考える (cは、膜の張力によって決まる定数とも言える)。膜における位置を(x, y)、時刻をtとするとき、振動の変位V=V(x, y, t)は、2次元波動方程式
2次元波動方程式
に従う。振動の周波数をωとするとき、V
波動方程式の解
とすることができる。[2]を[1]に代入し、変数x, yに関する部分を分離すれば、Uの偏微分方程式 (Helmholtz方程式)
変数分離後のUの波動方程式
が得られる。ここで膜の形状を、x方向の半長径が1、y方向の半短径がbの楕円とする。すなわち、その焦点が楕円の焦点f(ここに、焦点fとbの関係)であるときの楕円座標
  • 楕円座標
を用いれば、[3]は
  • Uの偏微分方程式
に変形される。このとき解U
Uの解(変数分離形)
とすれば、[5]は変数分離形
  • 変数分離形
になる。これはξ, ηの値に係わらず成り立つので、両辺を未知定数変数分離定数に等しいと置くと、2本の線形常微分方程式
  • Mathieuの微分方程式等
が得られる。[8]は変形された Mathieu の微分方程式、[9]は Mathieu の微分方程式に他ならない。よって、固有振動関数Uのうち、偶関数であるものをUe、奇関数であるものをUoとすると、
  • 偶関数解と奇関数解
となる。ここに正規化定数は、正規化定数相当に相当する定数で、それぞれ超越方程式
  • 正規化定数の定義
の正の実数解qのうち、絶対値の小さいほうからm番目の解である。
 より一般的な楕円形膜の振動は、bが等しいUeUoの級数で表わされる。すなわち、
  • 解Vの一般的な表示
となる。ここに定数a, c, s等は初期条件によって決まる定数で、これらがある項数以降0となる等によって消える場合は有限級数、そうでなければ無限級数となる。

固有振動関数(偶関数・奇関数)

 固有振動関数は、時刻tによらない(時刻0の)場合である。以下のグラフはこれを描画しており (アニメーションは除く)、それぞれの固有振動関数について、振動膜の立体形状図と、それを真上から見た平面図からなる。
 ①②:楕円形膜の固有振動(偶関数),③④:楕円形膜の固有振動(偶関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(偶関数),③④:楕円形膜の固有振動(偶関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(奇関数),③④:楕円形膜の固有振動(奇関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(奇関数),③④:楕円形膜の固有振動(奇関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(偶関数),③④:楕円形膜の固有振動(偶関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(偶関数),③④:楕円形膜の固有振動(偶関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(奇関数),③④:楕円形膜の固有振動(奇関数)

 ①②:楕円形膜の固有振動(奇関数),③④:楕円形膜の固有振動(奇関数)

 アニメーション(2.14MB)
 楕円形膜の固有振動 (偶関数)。楕円形膜の固有振動(偶関数)の時刻tによる変化。
  • 楕円形膜の固有振動(偶関数:動画)

固有振動関数の和

 楕円形膜の振動の一般的な例として、複数個の固有振動関数を足し合わせた場合を以下に示す。これは、時刻tによらない[14]が有限級数になる例に相当する。
 ①②:楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)
 ③④:楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)

 ①②:楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)
 ③④:楕円形膜の振動(合成)

 ①②:楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)
 ③④:楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)楕円形膜の振動(合成)

【工事中】

 工事中:ここに新規項目の追加を計画しています。
 Under creation:I'm planning to add a new contents here.
工事中

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